24話 軍隊ゴブリン
ーー未開拓ダンジョン、80層にて
「はいはーい、皆さん注目でーす!」
美味姫さんはそう言って、遺跡の一部を指差しカメラマンの俺にウインクしてきた。
あれはもしや、そこをズームして欲しいという合図か!
わかりましたよ美味姫さん。
『スーッ』
俺は美味姫さんのおそらく合図通りに、遺跡の壁の端をズームした。
「この遺跡の壁を見て下さい、かなりの年代ものだと思いませんか?」
ーーチャット欄にてーー
"確かに凄く古そう"
"このクオリティの感じ的に、セットとかはでは無さそうだな"
"ダンジョン内に遺跡があるなんて、聞いたことなかったな"
"てか美味姫、今どこにいるんだ?"
遺跡配信は順調に盛り上がっているらしく、同接も3万人を超えていた。
凄いな美味姫さん、メインコンテンツのゲテモノASMR配信じゃなくてもこんなに人を集められるのか。
さすがは大物配信だな。
『ズドォン』
その時、近くで爆発が起こった。
「な、なんだ!?」
「気をつけろ軍隊ゴブリンだ!」
先行していた大和がそう叫んだ。
ま、まずいぞ、今すぐ配信を止めて逃げないと。
美味姫さんは……。
「皆様大変でございます!エネミーです!敵です!大変です!」
「え?」
「今回実は、私はとあるダンジョン攻略者の方々と一緒でして、その方々がまさに今、ダンジョンモンスターと戦ってくれています!」
ーーチャット欄にてーー
"え、何だよそれ"
"やば!美味姫さんどんなとこにいるの!"
"やはり神枠だったか"
"美味姫の近くにいるの攻略者の佐野じゃね?"
チャット欄では、美味姫さんがどこにいるのかなどこ考察が始まっていた。
ていうか凄いな佐野君、名前が知られてるじゃないか。
さすがは攻略者協会のホープだな。
「おい春一!手を貸してくれ、先輩は美味姫ちゃんを頼みます」
「了解です、大和さん」
「こっちもわかった、大和!それに春一君もあんまり無理はしないでくれよ!」
『了解!』
そうして大和に呼ばれた春一君は軍隊ゴブリン隊の方へと駆けていき、俺と美味姫さんは後方で待機する事になった。
状況的に、大和と春一君の2人で前線を作って、俺は後方支援とかするのが理想だよな。
「美味姫さん、すまないけどカメラを返すね」
「は、はい!」
『サッ』
俺は美味姫さんにハンディカメラを返し、2人の後方支援をするため、美味姫さんの前に立った。
ーーチャット欄にてーー
"な、なんだ何が始まるんだ?"
"つかこのおっさん誰?"
"この人、もしかしてさっき美味姫とコラボしてたダンジョン侍じゃない?"
"ソロキャン侍な"
「【リミットボーナス】解放」
『キュイーン』
『かしこまりましたIDをどうぞ』
「スキル名"魔炎"」
『承認しました、非常に強力なスキルですので、対象を定めて慎重に運用して下さい』
「ああ、わかってるよ」
『シュオッ』
そうして俺の足元に赤色の魔法陣が現れた。
SSS級スキル"魔炎"は、足元に魔法陣を展開して広範囲かつ、高威力の炎弾を任意の対象にぶつけるスキルである。
これを使って2人を援護して、戦局をこちらに有利な方向に持っていけるといいんだが。
「美味姫さん、なるべく離れてて下さいね」
「了解です!」
「大和!"魔炎"を使うから、マーキングを頼む」
「了解!春一、少し離れてろよ」
「はい!」
大和はそう言うと、ポケットからポイントガンと呼ばれる、レーザーポイントを射出する銃を取り出した。
『ピー』
「先輩、ポイントをマーキングしました!」
「わかった、今からそのマーキングに向けて炎弾を放つ、2人とも当たるなよ!」
「頼んますよ先輩!」
「おうよ、"【奥義】豪炎弾"発動!!」
『ズドォン』
そうして俺の足元の魔法陣から巨大な炎弾が天高く放たれた。
ーーチャット欄にてーー
"す、すげぇ"
"これマジなやつなのか"
"つかあのおっさん、何者なんだよ"
『バコォン』
『グェェェ』
天に打ち上げられた巨大な炎弾は、空中でそのまま無数の小さな炎弾となり、軍隊ゴブリンの前線部隊に命中し、30体ほどのゴブリンを焼き尽くした。
「よし、今だ2人ともそのまま追撃を頼むぞ!」
「春一、了解です!」
「はは、やっぱり先輩まだ現役でいけるだろ!」
そう言って大和と春一君は軍隊ゴブリンへと向かって行った。
「す、凄すぎます……」
「美味姫さん!」
「は、はい!」
「俺たちはこのままゆっくりと後退していきます、ついてきて下さい!」
「りょ、了解です!」




