22話 新進気鋭の攻略者
専用武器、それはSランク以上の攻略者にのみ持つ事を許された特殊な武具。
ある者は大太刀を持ち、またある者はガントレットを専用武器として持つ。
そしてその力はSSS級スキルと同等かそれ以上とも言われている。
ーー未開拓ダンジョン、80階層にて
『グンッ』
SSランク攻略者、佐野春一は一撃を止めるとそのまま片腕でナイト・オークを押し退けた。
『グオオ』
「さぁて、一般人もいる事だし早々に決着つけないとだね、いくよ【ムラクモ】」
『ギュオッ』
春一がそう言うと大太刀は紫色の輝きを放つ。
「まさかこんなところで、攻略者協会の期待のエースに会えるとはね」
「はは、エースだなんてやめてくださいよ、俺はそんな器じゃないですって」
太一の言葉に謙遜まじりに笑う春一。
佐野春一、24歳。
大卒攻略者3年目であり、数々の難関ダンジョンを攻略しその名声を高めている新進気鋭の攻略者である。
3年目とまだまだ若手ではあるが、ランクはSSとなっており、周囲の期待を背負いながらも実力を示す、次代のエース候補として名高い、攻略者協会のホープであるのだ。
「いやいやその歳で、専用武器を持ってるなんて中々いないよ」
「千川さんにそう言われると照れるなぁ」
そう言って春一は笑みを見せるが、目だけは真剣にナイト・オークを見つめていた。
「あ、ありがとうございます、金髪の兄ちゃん!」
美味姫は突如現れた春一に驚きつつも、そう感謝を述べる。
「感謝をするのはまだ早いかもだよ」
『グオオ』
春一がそう話すと、セーフティーツリーの周りに複数体のナイト・オークが現れた。
「ひぃぃ、こ、殺されるぅぅ」
「かもね~」
「なっ、何故そんなに冷静でいられるんだ?」
「うーん、慣れてるからかな?」
春一は、美味姫の問いに笑顔でそう答える。
「【リミットボーナス】装填」
『かしこまりました、IDをどうぞ』
「スキル名"魔剣"」
『装填しました、強力なスキルですので対象の設定に誤りのないようお願いします』
「了解」
『ギュオッ』
SS級指定スキル"魔剣"。
春一の専用武器【ムラクモ】の固定スキルであり、その能力は斬撃の射出である。
対象に狙いを定め放つシンプルな性能ではあるが、その対象は複数指定可能。
扱いやすく汎用性も高いスキルとなっている。
「対象指定、ナイト・オーク」
『ギュオオオ』
春一がそう言うと、ムラクモに紫色のオーラが集まり出した。
「ムラクモ食事の時間だ!専用技"乱れ喰い"」
『ズバッ』
春一がそう言うと、ムラクモから無数の斬撃が飛び出し、太一や美味姫を避けてナイト・オークにだけ命中した。
『グオッ』
「凄いです!斬撃が曲がったりしてバケモノにだけ当たりました!」
興奮気味にそう話す美味姫。
「ふぅ、これで片付いたかな」
「やりますね金髪の兄ちゃん、曲芸師のようでした」
「曲芸師か……まぁ別になんでもいいけど」
美味姫の変わったあだ名に戸惑いつつも、春一は笑みを浮かべた。
「春一くん!」
太一はそう言って春一に駆け寄った。
「千川さん、よかったです間に合って」
「ナイスタイミングだったよ、ほんと来てくれて助かったよ」
「いえいえ、それより大和さんはどこです?」
「えーっと大和は、気がついたらいなくなってて」
「あー、それ大和さんっぽいすね」
春一はそう言って一瞬にして暗い顔を浮かべた。
「その感じ苦労してそうだね」
「なっはは、まぁそれなりに」
苦笑しつつそう答える春一。
その様子を見て太一は、"ああ、俺の後輩がその下の後輩から厄介者扱いされてるなぁ"と思っていた。
「お、春一じゃん!」
その時、背後から大和がやって来た。
「おい大和、お前どこ行ってたんだよ」
「すみません先輩、ちょっと周りを見てました」
「それは良いんだけど、何も言わずに勝手にいなくならないでくれよ、一応俺は"一般人"なわけなんだし」
「へへ、すみませーん、でも聞いてくださいよ先輩!あっちで凄いもん見つけたんです」
そう言って太一の注意を削ごうとする大和。
「何だよ凄いもんって?」
「驚かないでくださいよ、遺跡ですよ遺跡」
「遺跡?」
「ええ、このダンジョンに文明の跡があったんです!」
興奮気味にそう話す大和。
そしてその話を聞いて、目を輝かせる者が一人いた。
「遺跡!テンション爆上がり展開ですね!」
「び、美味姫さん……」
「でしょでしょー!やっぱ美味姫さんはそうなりますよねー!」
大和の言葉に目を輝かせる美味姫。
その様子を横で見る太一と春一は、同じ事を思っていた。
"あぁこの2人、合わせると面倒な2人かもなぁ"と。
「じゃ行ってみましょうか遺跡」
「はい!行きましょー!」
そう言って美味姫と大和は歩き出すのだった。




