21話 ベースキャンプ作り
ーー未開拓ダンジョン、80層にて
現代のダンジョン攻略において、ベースキャンプとは最重要である。
基本的に攻略プランは、1週間から長いと1ヶ月スパンで組まれることが多く、その間攻略者の前線基地としてベースキャンプの役割は大きい。
つまりベースキャンプ作りとは今後のダンジョン攻略にも強く影響を及ぼす重要な作業なのだ。
『パキッ』
「すみませんダンジョン侍、テントの支えをまた折ってしまいました」
「……あっははは、大丈夫ですまだありますから」
ベースキャンプ作りを始めてから早10分、美味姫さんはこの日3本目のテントの支柱折りを披露した。
ストックはあと5本あるし、多分大丈夫……。
『パキッ』
「あっ、ごめんなさーいダンジョン侍!またーー」
「美味姫さん!やっぱり他の作業の手伝いお願いします!」
「へ?でもさっき手伝って欲しいって」
「いやぁ、美味姫さんにはテントの設営は似合いませんよ、そこら辺のスライムで枕を量産してくれる仕事がお似合いですよ!」
「え、そうですかね、ならそっちやりましょうか!」
そう言って美味姫さんはスライムの方へと駆け出していく。
よ、良かった、上手く誘導できたみたいだ。
あと俺の名前間違い過ぎだよ美味姫さん……ソロキャン侍だからね、俺。
『ムニョムニョ』
「いやぁスライムちゃんは可愛いですね~」
俺がテントを立ててる近くで美味姫さんはスライムと戯れていた。
美味姫さんにはスライムの相手がちょうどいいな。
あのままあと15分ほどいてくれると助かるんだが……。
ーー10分後
『ガチャガチャ』
「うわぁ、凄いですねダンジョン侍、立派なテントですよ、これ」
「ありがとう美味姫さん」
俺は美味姫さんがスライムと戯れている隙に、全長10メートルほどの巨大テントを作り上げた。
「10分くらいでこんな大きなテントが立つなんて、流石ですね!」
「いえいえそうでもないですよ、この"誰でも簡単ダンジョンテント"を使えば、スイッチ一つで誰でも作れますし」
そうこの立派なテントの正体はエアーテントである。
ただ、このダンジョンテントは市販のキャンプ用とは違いその頑丈さは普通の家並みほどあり、攻略者にとってダンジョンでのベースキャンプ作りの要であるのだ。
「さてと、テントも立てられた事だし、一先ずコーヒーでも淹れるか」
『ゴトッ』
そう言って俺は小さいキャンプ用の鍋に水を入れ、焚き火の上に置いた。
『パキッ』
その時近くで物音がした。
なんだ?もしかして大和か。
テントを作ってるとき見かけなかったし、あの野郎もしかしてベースキャンプができるまで何処かで時間でも潰していたのか?
まったく先輩働かせて、自分は暇つぶしに散歩してましたなんて許さないからな。
『グオオ』
しかし、物陰から現れたのは全身鎧に身を包んだオークだった。
「まずいな、このオークもしかして【ナイト・オーク】か!」
ナイト・オークとは、普通のオークよりも一回り大きいオークの事で、特徴としてデカい体躯と全身を包む鎧がある。
ナイト・オークの戦闘力は、攻略者で言えばS級相当。
今の俺じゃとてもじゃないが太刀打ちできない。
ここは大和に任せたいところだが、あいにく大和の姿は見えない。
セーフティーツリーでやり過ごせると良いんだけど……。
『パキッ』
しかし俺の思いとは裏腹にナイト・オークは、セーフティーツリーへと足を踏み入れる。
『グオオ』
嘘だ、なんでこの中に入って来れるんだ。
この中はダンジョンにおける安置のはず、まさかナイト・オークには、ダンジョンツリーの匂いが効かないのか!?
「【リミットボーナス】解放」
『かしこまりました、IDをどうぞ』
「スキル名"剛拳"」
「承認しました、強大なスキルですので対象に狙いを定めてお使いください」
『キュオーン』
俺はSS級指定スキル"剛拳"を発動し、ナイト・オークに備える。
『グオオオ』
『ジャキッ』
唸り声をあげて腰にある長剣を引き抜くナイト・オーク。
さぁて剛拳だけで、どこまでやれるかな。
『グオオオオオ』
そうしてナイト・オークはそのまま長剣を振りかぶり斬りかかってきた。
「いくぞ【スパイクインパクト】!」
『ガキィン』
俺の放ったスパイクインパクトとナイト・オークの長剣は激しくぶつかり合い、火花を散らす。
その時、視界の端に美味姫さんを狙うもう一体のナイト・オークが映る。
まずいな、もう一体いたのか。
「ひ、ひぃぃぃ、殺されるますぅぅ」
「美味姫さん!」
間に合わない。
頼む、来てくれ大和!
『グオオオオオ』
雄叫びを上げ、美味姫さんに斬りかかるナイト・オーク。
美味姫さん、逃げてくれ!
「た、助けーー」
「専用武器【ムラクモ】解放」
『ガキィン』
その時、突如として現れた青紫色の大太刀が間一髪のところで美味姫さんを守った。
「はは、何とか間に合いました」
「あ、貴方は……」
青紫色の大太刀に金髪……もしかしてあの子が。
「どもっ、SSランク攻略者の佐野春一です」
そう言って春一君は、ニコッと美味姫さんに笑いかけるのであった。




