18話 合流
ーー未開拓ダンジョン、25層にて
『パチチチチ』
セーフティーツリーにつくとすぐ、俺は焚き火を起こした。
「わぁ、綺麗な炎ですね」
美味姫さんは焚き火を見てそう呟くと、両手を炎の方へ向けた。
「美味姫さん、見てください明かりダケの光を」
俺はそう言って道の端にある明かりダケを指差した。
『シュンッ』
「あ!弱くなってます!」
「そうです、明かりダケはダンジョンの夜が訪れるとああやって光を落とすのです」
「へぇ、というかダンジョンって夜があるんですか!」
「はい、もしかして美味姫さんは8時間以上ダンジョンにいた事がないのですか?」
「ありません!なんなら2層以上下に降りたこともありませんね」
「そうなんですね、ならいい勉強になるかもですね」
「勉強?」
「ええ、まずはダンジョンには夜があります。というより、8時間おきに昼と夜が繰り返してます」
「な、なんですかそれ!」
俺がそう話すと、美味姫さんは驚いて大声をあげた。
「まぁ初めて聞いたらそうなりますよね」
「は、はい、つい大きな声が出ちゃいました」
「まぁ夜と言っても、真っ暗になるわけではなくて、モンスターの種類が変わるという意味合いが強いのですけどね」
「モンスターの種類!?」
美味姫さんはまた大きな声をあげ、今度は驚きのあまりのけ反ってしまった。
この子、リアクションがいちいち大きいな。
これも人気配信者がゆえなのか、参考にしよう。
「ええそうです、ほら見てください、さっきまでいた大きなドラゴン達がいなくなっていくでしょ」
周りに目を向けると、さっきまで近くにいたアンダードラゴンや迷宮鳥、ダンジョンバイソンなんかが姿を消していた。
「ほ、本当だ消えてる……」
「ドラゴン種などの危険度の高いモンスターは、基本的にダンジョンでは昼型に分類されています、なので夜になると自分の巣に帰っていくのです」
「へぇ」
そしてドラゴン達が消えていくにつれ、夜型のモンスター達も目覚め始める。
『モキュモキュ』
「あー!スライムです、ダンジョン侍!」
「ソロキャン侍です、出てきましたね」
「なるほど、スライムは夜型のモンスターなのですね!」
「はい、スライムなどの小型モンスターはドラゴン種達が消えるとこのように増えていきます」
「なるほど」
その時、一体のスライムがセーフティーツリーに入ってきた。
「え!え!え!ソロキャン侍、スライムがここに入ってきてますよ」
入ってくるスライムを見てそう叫ぶ美味姫さん。
そうか、美味姫さんはスライムがセーフティーツリーに入って来れるの知らないんだ。
「大丈夫、スライム達も休みにきただけですので」
「ど、どういう事なのですか?」
「そもそもこのセーフティーツリーは、何のためにダンジョンにあるのかというと、攻略者達のための単なるモンスター避けではもちろんなく、このような下級モンスター達の棲家や安心できる場所なのです」
「な、なるほど」
美味姫さんはそう言って深く頷いた。
それにセーフティーツリーに入ってきたスライムにはこんな用途もある。
『ギュム』
俺は近くにいたスライムを掴み、自身の近くに引き寄せた。
「な、な、何してんですか!」
「はは、別にたいしたことはしませんよ」
そう言って俺はそのスライムを枕に、地面に寝そべった。
「枕なのですか?」
「まぁそんなところです、攻略者時代の知恵なんですけど、仮眠する時こうすると睡眠の質が上がるんですよね」
『ギュムギュム』
「そ、そんなライフハックがあったなんて」
「良かったら美味姫さんも寝てみますか?」
「え、」
そうして俺は美味姫さん用に、近くにいたスライムを取ってきた。
『ギュムギュム』
「わぁ何この感触、ぷにふわしてる~」
「良いでしょうスライム枕、結構クセになりますよね」
「なります~」
そう、スライム枕は、単なる仮眠用枕ではなく数々の攻略者を虜にしてきた有能な枕でもあるのだ。
「すぴー、すぴー」
「って、寝てるよ美味姫さん、寝つき良すぎでしょ」
気がつくと美味姫さんは寝てしまっていた。
大和が来るまでまだ時間あるし、俺も寝るか。
一応、大和が見つけてくれやすいようにGPSだけつけてっと。
『ギュムギュム』
そうして俺もスライム枕に頭を乗せ、仮眠を始めるのだった。
ーー3時間後
「先輩、先輩ってば」
『ユサユサ、ユサユサ』
「ん、なんだぁ」
「もう寝ぼけないでくださいよ!」
目を開けるとそこには、赤髪ショートの眼鏡っ娘がいた。
「なんだ大和か、早かったな」
「そりゃぁもちろん、急ぎますよ!なんたって美味姫ちゃんがいるんですから!」
「はは、そうかよ」
大和のやつ、やっぱり俺より美味姫さんを助けに来たって感じか。
まぁ別にいいけどね。
あとちなみに、大和は女性であり歳は28の擬似アラサー女子である。
「せ、先輩、もしかしなくてもこの可愛い寝顔は……」
「ああ、その子が美味姫さんだよ」
「うひょー!眼福開眼!来て良かったー!」
そう言って大和はおもむろにバッグから一眼レフを取り出した。
お、おい、大和のやつ何するつもりなんだ。




