12話 コラボ配信
ーー未開拓ダンジョン、25層にて
「とまぁ今日はこの辺で、ではではまたの配信でお会いしましょー!」
ーーチャット欄ーー
"美味姫ちゃん、バイバーイ"
"今日の音も最高でした!"
"ダンジョンアスパラ……食べてみたいな"
"おっさんどつなったんだ?"
"良音を今日もありがとう"
そう言って美味姫は、笑顔で手を振って配信を閉じる。
結局あの後アスパラ配信は30分ほど続き、もうアスパラが無いからという理由で美味姫のASMR配信は終わってしまう。
『スタスタ』
「いつまでそうしておるのだ、同志よ」
配信を終えた美味姫はそう言って地面で突っ伏したまま動かない太一の元へと駆け寄った。
「……な、なんでだ」
「ん?」
「なんで生きてるんだよあんたは!!」
太一は美味姫に話しかけられると、すぐに顔を上げてそう叫んだ。
「だから言ってるだろ同志よ、私にはいかなる毒も効かぬと」
「で、でも明かりダケで腹を壊していたろ!」
「あれは調伏中だったので、仕方がないのだよ同志よ」
「ちょ、調伏だと?」
調伏とは、美味姫が勝手に言ってるだけでその中身は免疫獲得の工程である。
美味姫の持つ"スーパーアイアンマッハ"は、異能の実により獲得した特異体質であり、スーパーアイアンマッハが毒を無効化するためには、1段階目として毒を喰らう必要があるのだ。
そうして喰らった毒を解析し無毒化にする事で、次に食べた時には何も身体の異常は出ないというメカニズムになっている。
「うむ、毒の強さによってその調伏時間はまばらでな、5分ほどで終わるときもあれば1時間ほどかかるときもある、そして調伏中はさっきみたいに動けなくなるのだよ」
「なるほど……てことはもしかして、解毒薬とか使わなくても大丈夫だったって事なのか?」
「おうよ!だからさっきから言ってるだろ、ゲテモノ喰らいの大食漢と」
「いやいや、わからないって」
『ドサッ』
そう言って太一はまた、地面へと突っ伏してしまった。
「ほほう、なるほど理解しましたぞ、もしや同志よ私があのアスパラで死ぬと思っていたのですね」
「そうだよ、だって普通はそう考えるでしょ」
太一は突っ伏したままそう話す。
「なるほど、その心配してくれる心意気には感謝します……だがしかし!!甘いですよ同志よ、100万人を越すダンジョン配信者が常識で測れるわけがないじゃないですか!?」
「そ、そうなのか……」
太一は困惑した様子で頭を上げてそう話す。
ちなみに、美味姫のその回答への答えは否である。
必ずしも登録者100万人を超えているダンジョン配信者が皆、彼女と同じく特異体質持ちではない。
普通の凡人だって多い、いやむしろそっちの方が大多数である。
「まぁしかし、変な気を遣わせてしまったのは確かなようですし、どうでしょう同志よここは貴方の配信に私が出るというので手打ちにしませんか?」
「え?」
「コラボ配信というやつです、おそらく私が映れば貴方の配信は大盛り上がりとなるでしょう」
美味姫はエリートビジネスマンのような鋭い目つきでそう話す。
コラボ配信、それはダンジョン配信業界において下層配信者が上位層にいち早く上がるための手段である。
ある者は一夜にして、登録者が2倍、3倍に膨れ上がりまたある者は、コラボして数週間後にスポンサーがついたなど、その逸話は数知れず。
「い、良いんですかそんな」
「もちのろんだぜ同志よ、私を救おうとしてくれたその心意気、ナイスだったぜ」
『グッ』
そう言って美味姫は、親指を立ててキメ顔をした。
「ありがとうございます!」
太一はそう言っと頭を下げた。
「いいんだよそんなのは、それでコラボ配信だけどすぐやるかい?」
「え?」
「ちょうどいいだろ、私の配信も終わったばかりだしまだまだ熱はあるだろ」
「そ、そうですね!でもコラボ配信って一体、何をすればいいんですか?」
「ふふ、考えてあるぞ同志よ」
『ガサガサ』
そう言って美味姫はポケットからある物を取り出す。
「そ、それは……」




