11話 ダンジョンアスパラ
ーー未開拓ダンジョン、25層にて
『ジュオオオ』
「あ、危ねぇ」
美味姫のスキル"美食ブラスト"を間一髪のところで太一は、まだ発動状態だったスキル"剛拳"で防いでいた。
「ちっ、やるなぁ同志よ」
自身のスキルを防がれてしまった美味姫は、そう言って太一をの方を見た。
「やるなぁじゃないよ!ダンジョンアスパラなんて食べて死にたいのか!」
「ふふ、甘いな同志よ私はそんなもんで死なんぞ」
「いやいや、明りダケで死にそうだったじゃんかよ」
「なっ、ち、違うもん!!」
太一の追求により、つい素が出てしまう美味姫。
「え?」
「私には鋼鉄の胃袋があるから、大丈夫なの!」
「こ、鋼鉄の胃袋……クスッ」
太一は思わず笑いそうになってしまう。
「嘘じゃないもん!昔、ダンジョンで見つけた木の実を食べてからそうなったんだもん!」
「木の実だと……もしかして異能の実か?」
異能の実。
それはダンジョン内にて、たまに自生する可食生の木の実であり、かなり希少価値の高いものである。
そう美味姫は、今から3年ほどに前に家族と訪れたとあるダンジョンで異能の身を食べて以降、スーパーアイアンマッハの能力に目覚めていたのだ。
「異能の実ってなにそれ?」
「いや、知らないなら別にいいんだけど……」
「今だ!」
『シュパッ』
そう言って美味姫は、一瞬の隙をついて太一からダンジョンアスパラを奪い取った。
「しまった!」
「へへーん、同志よ爪が甘いな」
『パクッ』
そう言って美味姫は口の中にダンジョンアスパラを放り込む。
『ササッ』
口へ放り込むとすぐに美味姫は、ポケットからASMR用のモサモサのついたピンマイクを取り出し、口元へと近づけた。
『ボリボリ』
『ボリボリ』
ーーチャット欄ーー
"おぉ、良い音ですなぁ"
"ダンジョンアスパラなんて、普通は食べれないから咀嚼音も初めて聞きましたよ"
"美味姫さんの食べ方綺麗"
チャット欄では、普段は聞くことができないダンジョンアスパラの咀嚼音が聞けたことによる感動で溢れていた。
「た、食べちゃった……」
ダンジョンアスパラを口にすると、強い痺れに襲われ数分で死に至ると言われている。
太一から見れば、美味姫は配信のために自殺をしようとしているように見えていたのだ。
「仲間たちよ、どうだいこの音は?」
ーーチャット欄ーー
"最高っす美味姫さま"
"ボリボリ音が耳に心地良いです"
"良き音だ……"
"このために最近、ノイキャンのイヤホン買いました"
「おお、皆さん気に入ってくれたかそれは何より」
そう言って美味姫はカメラに笑顔を向ける。
「や、痩せ我慢してるのか……」
もうじき美味姫が死ぬと思っている太一は、静かにそう呟く。
「ダンジョンアスパラに効く薬は持ってきていないから、俺では彼女を救う事ができない」
『ドサッ』
そう言って膝から崩れ落ちる太一。
ーーチャット欄ーー
"ん?何やら物音がしましたな"
"さっきのおっさんかな?"
"あの人、もしかしてソロキャンの千川丸じゃない?"
おっさんについての話題で少しだけ盛り上がる配信。
『ボリボリ』
「んー、ダンジョンアスパラ、意外と美味しいぞ皆んな!」
自信のことを思い膝から崩れ落ちた太一をよそに、美味姫は美味しそうにダンジョンアスパラを頬張っていた。
「く、クソォ、俺がもっとちゃんとしていればあの子は……」
『ドスッ』
太一は自身がダンジョンアスパラの解毒薬を持ってくるのを忘れたことを悔やみ地面を叩いていた。
ダンジョンアスパラは現在はあまりにも有名な毒性のある非可食生の雑草であるため、見分けるのは攻略者にとっては義務教育よりも当たり前となっている。
故に誰も今やダンジョンアスパラの解毒薬など持っていないのだ。
「あーほんとに美味しい、マヨネーズとか味噌つけても合うなコレ」
『ボリボリ』




