10話 ダンジョンASMR配信
ーー未開拓ダンジョン、25層にて
配信者、美味姫。
軽快なトークにASMR系配信とは思えない大声で現在人気急上昇中の注目株。
そして彼女は、毒性のある物を好んで食べる風変わりな配信者でもある。
「おはおはおっはー!皆様、ごきげんよう」
そう言って美味姫はカメラの前で愛嬌を振り撒き始めた。
「挨拶多いな」
美味姫の挨拶に思わずそう言葉が漏れる太一。
そして美味姫のチャット欄には、瞬く間に人が集まっていく。
ーーチャット欄ーー
"おはおは!"
"来たよー"
"楽しみにしてましたー"
そうして集まった同接は2万人を超えていく。
「はーい!ご機嫌よう仲間たち、今日食べていくのはこの食材です!」
『ゴトッ』
そう言って美味姫はリュックサックから、綺麗な緑色をしたアスパラのようなものを取り出した。
「おいおいそれって」
美味姫の取り出したその食材を見て焦り出す太一。
それもそのはず、美味姫の取り出したそれは猛毒のダンジョンアスパラだった。
"ダンジョンアスパラ"はパッと見だとアスパラのように見えるが、実は猛毒を持つ非食性の雑草。
その昔、今よりも未開拓ダンジョンが多くあった時代に多数の攻略者がダンジョンアスパラを食べて、腹を壊したという逸話があるほどに有名な雑草でもある。
ーーチャット欄ーー
"これは……"
"またまた凄いのを食べますね、美味姫は"
"ダンジョンアスパラですか"
"まぁでも美味姫ならいけるでしょ"
謎の信頼感に溢れるチャット欄。
それもそのはず、美味姫にとある特殊体質があるためである。
"スーパーアイアンマッハ"これは、スラングであるアイアンマッハから来ている言葉で、どんな毒性のある食べ物でも1回目で免疫を獲得し、2回目からは普通に食べれるという体質。
これをもつ美味姫は、あらゆる毒性のあるものを2回目からはほぼノーリスクで食べれてしまう。
そしてダンジョンアスパラの毒は克服済みである。
「皆様ご安心してください、このダンジョンアスパラの毒は克服済みでございます、故に食い放題です!」
そう言って美味姫はリュックサックから、沢山のダンジョンアスパラを取り出した。
「な、なんだあの量は、死にたいのかあの子は」
美味姫の体質の事も毒を克服済みである事も知らない太一は、美味姫の取り出したダンジョンアスパラの量を見て焦り始める。
「と、止めなきゃ……」
そう言って走り出す太一。
ーーチャット欄ーー
"うおおお大食いタイムだぁ"
"一体今日はどんな食レポが見れるんだ"
"す、凄い量だな、あんな量を食べたら美味姫といえどまずいんじゃ"
チャット欄でも美味姫を心配する声がしばしば見られるが、これこそがこの配信の真骨頂でもある。
許容量を超えるのではないかと疑ってしまうほどの毒性食物の量。
今回は食べれないのではという不安と焦りを視聴者に与えることで生まれる緊張感こそが、この配信の持ち味なのだ。
「ではでは頂きますよ~」
そう言って大口開ける美味姫、その時1人の男が背後から現れる。
「は、早まらないでぇー!」
「え……」
『パシッ』
美味姫が口にする直前でダンジョンアスパラを回収する太一。
ーーチャット欄ーー
"な、なんだこのおっさん!?"
"乱入者だぁ"
"こんなイベントも用意していたのか、美味姫は"
突然の太一の登場で響めくチャット欄。
「こんなもの食べて死にたいのか君は!」
「わ、私の配信を邪魔するなぁ!!リミットボーナス【解放】」
『キーン』
そう叫ぶと美味姫の両目が金色に輝き出した。
ーーチャット欄ーー
"久々にでるな"
"出るぞ、美味姫の必殺スキル"
"美食ブラストだぁ!"
『かしこまりました、IDをどうぞ』
「スキル名"美食ブラスト"」
『承認しました、強大なスキルなので対象に狙いを定めてご使用くださいね』
「もちのろんだぜ!」
「ちょちょ、いきなりそれは」
「天誅ー!!」
『ズドォン』
そうして美味姫の必殺スキル美食ブラストが太一に襲いかかる。




