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ある男(男の子)の話。  作者: 土田土
息子のために

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もう1人の息子

祐希家とは別の、優樹家のお話です。


[家族構成]

祐希家

お父さん

お母さん

祐希(兄)

美穂(妹)


優樹家

パパ

ママ

優樹

 真っ暗だ。何も聞こえない。会話は心の声とだけ。手足も動いているのか分からない。孤独で死にそうになる。もしかしたらもう死んでいるのかもしれない。もし死んでいたとしても死にたい。

 あの話はどうなったのだろう。。まだ希望はあるのだろうか。。。ああ、、ねむ、、い、


-5年前-

「5歳の誕生日おめでとう!」ママとパパが笑ってる。パパは僕の欲しかった絵本を、ママは音のなるバースデーカードをくれた。

 バースデーカードには"ゆうきへ、たんじょうびおめでとう!ゆうきがうまれてからずっとママのまいにちは、しあわせだよ♡これからもげんきいっぱいたのしもうね!"とかいてる。ハッピーバースデーのメロディが流れ終わるのと同じタイミングで読み終わる。


 心がこしょばゆくなる。とってもしあわせな1日だ。パパがバースデーケーキを持ってくる。「一つ大人になった優樹にはこのケーキを渡そう!」とパパが持ってくる。

 それは見たことのない水色と白のケーキでところどころに赤と緑のクッキー?のようなものが混じっている。一口食べてみると驚いた。冷たいアイスだったのだ。

 そして更に驚きだったのは口に入れた瞬間パチパチと音を鳴らし始めたのだ。少し痛いような、でも刺激的なこの味に、これが大人の味かとうれしくなった。


 「パチパチしてておいしいね」とパパに言うと「冷たくて甘くて美味しいだろ〜」と自慢げにパパが言った。甘さは分からなかったけど「うん!」とえがおで答えた。


 このケーキが最初だった。そこから僕は徐々に味がしなくなっていた。とてもゆっくりと薄れていく味覚に僕は最初気づかなかった。

 サラダにかけるドレッシングの量、お寿司にかける醤油の量これらが日増しに増えていったのだ。


 そんな異変にママも気づき病院へ行くことにした。最初は小児科に行き検査をしたが異常はなく、大きな病院で脳の検査をすることにした。

 MRIをとると言われて入った機械はすごくうるさくて緊張した。そこでも異常はなく経過観察と判断された。

 

 次は嗅覚だった。僕の唯一の特技はただいまーと帰った直後に夕飯を当てられることだ。主菜、副菜のみならず、汁物までも。最初は汁物がわからなくなり、次に副菜、そして主菜も当てることが出来なくなった。


 次は視覚だった。なんだか徐々に部屋が狭く感じるようになった。部屋というより、世界?が狭いような。僕は気づいた。視界の端が徐々に暗くなっていることに。


 次は感覚だった。ゆびさきは液体のりやボンドを塗り広げ、乾かした後のように感覚が鈍った。

 ある日家庭科の授業でカレーを作った。にんじん、じゃがいも、たまねぎを班のみんなで手分けして切り、切った具材をフライパンで炒める。


 その時に1人が床の血痕に気づく。誰の血だと、僕は慌てた。同じ班のみんなの手を確認する。よかった僕の班じゃないみたい。

 あれ?みんな僕を見ているどうしたんだろう。恐る恐る自らの手を見てみると深く傷がついている。青ざめた先生がすぐに救急車を呼びすぐに手当てされた。

 

 その病院で僕の体に起こっている異変をお医者さんに話した。お医者さんは目を丸くして、俯いた。「こんな小さな子どもが、、」と小さく呟き、精密検査をすることになった。


 精密検査の結果わかったことは僕の病気は世界に数人しかいない奇病であること。この奇病は4年から5年をかけて五感を全て失っていくこと。人体の構造上人体が治ることは無いこと。

 だがそれでも治そうと病気に立ち向かう人達が大勢いること。だった。


 僕はこの時何も理解出来ていなかった。しかしママとパパはそれを知った時、見たことがないほど取り乱していた。

 僕は元気だよと声をかけたが何故だか一層泣かせてしまった。ママとパパは僕に沢山謝った。誰も悪くないのに。


 2人に対して、悲しい思いをさせてごめんね。元気に育てなくてごめんね。ママとパパは何も悪くないよ。と話した。家族みんなで慰め合い励まし合った。


 その時に僕はどんな方法でも元気になると、この病気を乗り切ると、心に強く決めた。


 病室から紅葉を見た。僕の病気は進行していた。微かに光が見える。小さな音は聞こえない。味はしない。匂いもしない。感覚もない。


 今まではパパとママが毎日会いに来てくれていた。だけど最近になってもう一つ会いに来てくれるようになった人達がいる。

 「ゆうきくん、体調はどう?」大きな声で尋ねる「元気いっぱいだよ」と笑顔を作る。僕の声量少し大きかったかな?びっくりしてる。

 「よかったぁ元気一杯のゆうきくんを見れて嬉しいよ!少しだけカメラ回してもいい?」「いいよ、かっこよく撮ってね」「もちろん!」遠くの方で何か会話してる。


 どうやらカメラが回り始めたようだ。大体カメラで撮るのは数分。何か喋ってるけど僕には何も聞こえない。その数分が終わった後また耳元で「ありがとう!バッチリだよ!」と聞こえる。

 僕は指でグッドサインを作り、「また来てね」と伝える。これが僕たちの関係だ。


 最初はパパからの話だった。僕の耳がまだ雑音が聞こえないくらいだった時「ゆうき、パパはゆうきの病気を治すためならなんだってしようと思っているんだ。」と話をしてくれた。


 続けて、この病気はまだ有名じゃないこと、だからこそこの病気をたくさんの人に知ってもらうことでこの病気に立ち向かう人を1人でも多く増やしたいんだという話だった。

 僕は目立つのがあんまり好きじゃないけど、パパとママのためならと承諾した。


 そんなある日、パパとママがもしかしたらこの病気を治せるかもしれないと話してくれた。

 僕はすごく嬉しくなった。心の中で飛び跳ねた。この病気が治ったら色んな事をしたかったんだといい、やりたい事をパパとママに話した。

 だけど2人の声色からは嬉しいよりも恐怖や不安が混ざっているように感じた。

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