第五話 最悪案件が来ました
新しい案件が来ますが、これがなかなか厄介な案件と現場でして・・・
その日、俺は朝から何か嫌な予感がしていた。
数日前、アシスタントの蒼月さんと、ようやく長期出張続きの生活を終えて、会社へ戻ってきたところだ。
久しぶりの技術サービス課、二人して帰社報告をする。
「お久しぶりです。ようやく、現場から現場への渡り鳥生活も終了しましたよ。お土産と報告書の山、持って帰りましたからね」
課の皆は爆笑してたが、課長だけは渋い顔……もしかして?
「お疲れ様、田無、蒼月さん。まあ、蒼月さんは田無の巻き添えみたいな形になってたからねぇ、サービス課の女子たちも同情してたし、課長や部長に苦情入れてた人もいてねぇ……というわけで、蒼月さんは、当分の間、出張には出るなと組合から禁止令が出た。まあ、これも田無が一人じゃ無理だと判断した段階で、無効になるんだが……ってことで田無、次はできるだけ蒼月さんのアシストに頼らないでくれ。できれば、一ヶ月以上は期間を空けてくれ」
ということはですね……
「課長、それじゃ、できるだけ長期やヘビーな案件を持ってこないでくださいよ。今まで俺一人でやってこれたのは、できるだけ俺一人で、作業員が帰ってもカバーできる範囲の案件や現場だからだったんですからね」
それ聞いた課長の顔が、さらに渋い顔色と表情に……おいおい、
「えーっと……もしかして?ですが、もうヘビーで長期の案件が来ていると?」
課長が、なにか言いたいのを我慢して数秒……
「すまんな、田無。連続は止めてくれと上に抗議したんだが、これは断れん案件、現場なんだよ」
何だ?断れない案件と現場?
もしかして、企業案件とかじゃない、お国の……
俺の表情を見たのか、課長が頷く。
おいおいおい、勘弁してくれよ!
それってさ、お国の裏組織が出張ってくる案件とか現場じゃないのか?!
朝礼が終了し、各自のデスクへ。
でもって、朝一で課長から会議室へ来てくれとメール。
嫌だなぁ、と暗い顔で会議室へ。
「田無、すまんな。これが次の案件と現場の見取り図、そして、企画書と設置図面だ」
ドサッという音が響くくらい、書類の束が俺の前に。
一時間かけて、俺はそれを読み込む。
赤い機密印鑑がベッタリと押されている表紙だらけの書類。
そこに書かれているものとは……
「お国の新しい軍事情報サーバシステムの構築と建築……場所は絶海の孤島。島民はいるとはいえ、百名もいない孤島に、島の二割近い面積をカバーするサーバシステム……というか、課長、もしかして、これ、サーバシステム構築を兼ねた、領海防衛システムを含む防衛基地の構築案件じゃないですか?サーバーもそうですが、基地の規模や防衛レーダーの大きさ、そして、防衛部隊としてドローン中心の電子機械化部隊が二個大隊。もう、普通の企業案件とは、規模も予算も段違いじゃないですか」
「理解したか、田無。そして、何故にこの案件が断れないのかも理解したよな。機器設置や調整までは人数かけられるが、それ以上のシステムインストールやその後の設定と調整に、人数をかけられんのだと。あまり人数を長期間派遣するのが、宿とか食料の問題で無理なんだと言われてな。うちの会社で、ここまで大規模なシステム構築の経験があるのは、田無、お前だけなんだ。最初の二ヶ月くらいは搬入とか設置が主な作業となるんだが、そこまでは軍衛隊がカバーしてくれると言われてる。問題は、それ以降。ハード以外の人件費と食料、宿の問題がなぁ……」
はぁ……理解した。
でもって、裏の事情もあるんだろうな、これ。
後で総務部長へ連絡取って、その事情を聞くとするか。
総務部長から、この案件が我社へ来た理由を説明された。
本来、こんな超のつく大規模な案件、我社がとれるわけがない。
うちの会社は中規模なサーバ構築を主な得意業務としている。
本来は地方事業までの案件なら対応できるが、こんな国が関与する、それも防衛事業関係なんて食い込む隙すらないはず。
総務部長にカマかけたら、すぐに話してくれた。
以前、地方銀行グループのサーバセンター設置案件で厄介な悪霊たちを祓った話が、お国の関係に漏れちまったようだ。
普通、このくらいの悪霊・怨霊レベルになると俺のような民間の陰陽師モドキに対応なんてさせない。
それこそ、お国の裏機関に所属する、その類の障害に対応できる組織が出張ってくるはずだ。
ただし、その組織が出張るには、その現場の位置が悪すぎた。
「資料や書類に書いてあったと思うが、その島、その昔に戦争があってな……歴史に残るくらいの大激戦で、こちらにも敵軍にも、双方合わせて10万人できかない死者がでた。で、もう想像できると思うが、それが供養もされず遺体が島に残された。時が流れ、それらの遺恨と怨念が育ってしまったようで、昼間は良いが、夜になると島のものは家から出ない、戸締まり、窓閉めとカーテンも全て閉めて、月明かりすら入らぬ家の中で、怨霊たちの怨嗟の声に怯えながら寝ることとなっている」
俺に渡された資料にも、そのことは戦史として歴史解説で、あっさりと書かれている(表に出せる機密文書だからな)
漁港や定期船の着く港、ヘリポート(滑走路を作れるほど大きな島じゃない)に怨霊は現れないが、問題は、その島にある小さな浜。
その昔の激戦で敵味方双方ともに水際戦となり、その浜には今でも揚陸艦や機関銃の残骸、遺骨拾いに漏れた死者の骨たち、今でも時折、波に洗われて浜に打ち上げられるとのこと。
これじゃあ恨みなんてレベルじゃすまないのは想像できるだろ?
それこそ敵も味方も、その怨念という一点で集合・融合し、とてつもない怨霊レベル、それこそ祟り神と言えるほどのレベルにまでなっている霊もいるとのこと。
今度こそ俺も腹を括らないと……




