第79話
白いスーツ姿で銃を翳す男。イサワカ製菓株式会社代表取締役社長、諫若一成だった。またの名をミノル。
「なぜここに・・・!?」
事態が飲み込めなかった。が、
「ま、まさか!?」
その疑念を消せなかった。
「そのとおりだよ、北島。うちの会社は紅鷲と繋がっている」
「い、いったい、どういうこと!?」
諫若が笑う。
「気づくのが遅かったな。イサワカは紅鷲の在日諜報機関だ」
「会社ぐるみだったの!?」
諫若が頷く。
「死ぬ前に教えておいてやろう。红鹰は中国名だ。これを日本語に直すと赤鷲になる。つまり“a・k・a・w・a・s・i” 逆さから読むとどうなる?」
姫花はアルファベットをひっくり返して読んだ。
「i・s・a・w・a・k・a いさわか!」
「ご名答。この名は红鹰を文字ったものだ。つまりおまえたちもその一員だったんだよ。红鹰のために働いていたんだ」
「そ、そんな」
信じたくなかった。自分が精勤してきた会社が紅鷲に加担していたとは。
「確か、イサワカはあなたの代で社名と代表者であるあなたの名前も変えたわ。代々続く山中製菓からイサワカ製菓に。そしてあなたは鹿島の姓から諫若に。それが8年前。ということは、その時から・・・」
「そういうことだ。俺が先代社長山中を追い出して、この会社を乗っ取った。紅鷲の力を借りてな。山中は調べればいくらでも埃の出る不正取引体質の会社だったからな。いわば企業浄化よ、俺がやったのは」
諫若は傲慢に笑った。
「その御礼と服従の意志として社名を紅鷲に模したのだ」
姫花はその汚らわしい社名にすべての忠誠心を失った。
「製菓会社の看板を掲げながら裏では国家機密を売っていた。ま、まさかその資金がわたしたちの所得にも・・・?」
「そんなバカな真似はせん。マネーロンダリングで足がつけば俺が追い落とされる。情報売買は社の財務諸表には上がってこん」
「その裏取引にわたしたちを利用しようとしてたのね」
「おまえたちの能力は特別だ。紅鷲の欲しがる情報が簡単に取れる。堀口のおかげでいい思いさせてもらった。だが、イサワカの裏事業に使えぬのなら始末するしかない」
諫若は姫花に銃を向けた。
「余計なことまで知りすぎたしな」




