第77話
ところがだ、そこにさっきまで映っていたオヤブンの姿がない。
まさみもこれに気づいた。
「あいつは!? どこへ消えたんだい!」
見ると部屋の扉が開いたままになっている。
その時である。
『これ以上、好き勝手させんたい』
驚いてまさみが声を上げる。
「誰だい!?」
『ええ加減、覚えて欲しか』
「琴実、あんたかい!」
姫花が呟く。
「琴ちゃん?」
琴実がまさみの中で呟く。
『オヤブンはおいが救出した』
「なんだって! どうやって!? あんた牢から出られないだろ!」
『お生憎さま。あんたの心優しい部下が救ってくれたばい』
「バットと佐古丸のことかい!」
『えろう恐縮して逃してくれたばい』
「嘘をいいな。あんたあたしを欺いて時間稼ぎしてるだろ? そうはいかないよ。おおかたガス室のロックをし忘れたんだろう。あとで連中たっぷりお仕置きしてやるけどね」
『ほっだら呼び戻してみるとよか。あーたのもとに来るかどうかわからんけんど』
まさみは琴実の悪あがきだと思っている。
「あいつら呼んできな!」
部下にそう命じた。
姫花は思った。
『ひょっとして、琴ちゃん、あれを・・・』
姫花の推測は次の部下の報告で確信に変わった。
「いません。どこにも。それに牢も、ガス室も、全室開錠されています!」
まさみが大声を張り上げる。
「ば、ばかな!」
背後で声がする。
「そう、そのばかなことが現実に起きたばい」
まさみが振り返る。
琴実が立っていた。




