第76話
まさみがコントロールパネルに触れると壁に巨大なディスプレイが浮き出てきた。
ディスプレイが2画面に分かれ2つの部屋が同時に投影された。右側に大男が映っている。バットだ。バットは血まみれのシャツの人間を肩に乗っけている。雅臣だ。雅臣は頭部に紐でくくった袋をかぶせられ絞首台にでも乗せられるのかといった有り様だ。
左側には違う男が映っている。出口を探しているのかしきりと壁を叩いている。
「オヤブン!」
姫花が叫んだ。まさみに向かってなお叫んだ。
「なにをしようとしているの!!」
冷めた顔してまさみが呟く。
「なにいってんだい、治療だろ」
バットが部屋を出たのを見届け、まさみは言った。
「1号房开始(1号室開始)」
右側の部屋に白い煙が侵入してきた。
「あ、あれは!?」
「楽にしてくれるセラピーさ」
「毒ガスね!」
しかし雅臣は動かない。
まさみは言った。
「やっぱり死んでたんじゃないのかい?」
矢先、袋かぶせられた頭部が大きく揺れた。
「やめて!」
姫花が叫ぶ。
苦しさのあまり雅臣はのた打ち回る。
「治療じゃないでしょ、これは! 人殺しよ!!」
姫花の叫びが虚しく響く。
まさみは楽しそうに眺めている。
やがて、雅臣の悶絶が止み動かなくなった。情景としてはこのガス室に入る前と何も変わらない。違うのは一人の人間の命が人的に奪われたということだ。
「治療は終わったよ。さあ、仕事をする気になったかい?」
この残虐な行為に姫花は完全に打ちのめされた。
『救えない、わたしの力では・・・』
崩れ落ちる姫花。そんな感傷も許すまじと、まさみは追い打ちをかける。
「ぐずぐずしてたら、もう一人楽にしてあげるよ!」
「や、やめてえ!」
姫花の叫びはまさみの残虐さの背中を押す。
「2号房开始(2号室開始)」
今度は左側の部屋に白い煙が侵入してきた。
「もう、もうやめて! お願いだから」
こんな抵抗しかできない自分を姫花は呪った。




