第71話
「ここが裏口ね。表口は別にあると思う。わたしは知らない」
周は背中のリュックから村上から受け取った袋を取り出し、3つの鍵のうちの1つを使って建物の分厚い防弾扉を開けた。
周が建物内に入り灯りをつけた。姫花とオヤブンの眼に映ったのは棚に並んだ怪しげな瓶類である。両サイドの壁には防護服やらガスマスクやら物騒な装備が掛けられている。室内の空気がなんだか重苦しい。
周が部屋の隅を指差した。
「あそこに次のゲートがあるね」
指した先の地面に観音開きの鉄の扉が見えた。両方の扉には鷲を象った紋章が中央と四隅みにそれぞれあった。周は2つめの鍵を取り出しこの扉を開けた。扉の奥には階段があり地下へ続いている。
「急がんと、時間あらへんで」
先にオヤブンが降りようとした。
「等待(待って)!」
周が止めた。が、オヤブンはわかっていない。
3段目の階段にオヤブンの足が乗るのと周がオヤブンの襟をつかむのとが同時で、仰け反ったオヤブンの顔面めがけて何かが飛んできた。
それがオヤブンのアゴを掠め天井に深く突き刺さった。ボーガンの矢だった。オヤブンのアゴから血が滴る。
周が怖い顔で言う。
「ここは紅鷲のアジト。迂闊な行動は命取りだよ」
「す、すまん」
オヤブンは首をすくめて手のひらでアゴを触った。
階下は四面白壁に囲われた地下房だった。その白壁に周が手を当てている。
「何さがしてるの?」
姫花が話しかけると、
「住口!」
周が囁くような声で言った。
壁にわずかに隆起した部分がある。そこで周の手が止まった。
姫花とオヤブンは黙って周の動きを見ている。
周がその部分を強く押すと、壁の一部が反転しスマートスピーカーのような物体が出てきた。
「音楽でも聴くんか?」
周が頭を抱える。
「壁に避難して!」
周が叫ぶ。
次の瞬間、地下房の床がまっぷたつに割れて、巨大な落とし穴が現れた。周は姫花を壁に突き押した。しかしオヤブンは間に合わなかった。オヤブンだけ落下した。




