第62話
さて時を戻す。雅臣が行方を眩まして3日。琴実は周麗華に狙いを定めていた。仕事帰りの周と同じ電車に乗り見つからぬよう後を追った。
周は雅臣の居場所を知っている。しかも周は雅臣を囮に使って自分たちをおびき出そうとしている。
それがわかったうえで琴実は単独行動を取った。紅鷲の狙いが姫花と琴実ならば二人が一緒に行動するのはまずい。一網打尽は避けなければならない。それゆえ、琴実はまず自分が雅臣の情報を得ようと動いたのである。
周は五反田駅で降りた。隣の車両から伺っていた琴実もそれを見て飛び降りた。周は駅裏通りのコンビニに入った。そこでなにやら食品などをどんどんカゴに放り込んでいる。
その様子を、琴実は向いの路地から見ていた。ひょっとすると雅臣の分も調達しているかもしれないと想像した。ならば雅臣の情報が何かつかめるかもしれない。
そこで、琴実は周に仕掛けた。電柱と路地の狭い隙間に体を押し込め、そこから意識を飛ばした。
琴実は周を探った。ところがだ。周の心の声を琴実はまったく理解できなかった。
『你的身体会有多少?(売ればいくらになるかしらね?)』
琴実が密かに嘆く。
『あちゃぁ。中国語ね』
『在你的情况下(あなたの場合)』
『いっちょんわからん』
『落入了圈套(罠にかかったわね)』
『なんばいおっと?』
『再见(ザイチェン)』
『あ、これは聞いたことあるたい』
『仍然抓住(いまよ捕まえて)』
『確か、さようならたい!』
そこで周の携帯電話がなった。周が電話に出た。電話の相手は日本語だった。
「捕まえたぜ。へっ、まるでダッチワイフだな」
周は仲間をねぎらった。
「ごくろうさま」
琴実は周の意識の中でこの会話を聞いたが母国語でも言っている意味が分からなかった。
その直後、周が琴実に話しかけてきた。
『琴実さん、そこにいるのでしょう?』
びっくりしたが見破られたのならば仕方がない。琴実は周に直接囁いた。
『なしてわかった?』
『堀口のいるところ知りたいのでしょう?』
かみ合わない会話にも琴実は先を急いだ。
『知っとるなら話が早か、教えてはいよ』
『紅鷲のアジト』
『それはどこ?』
『聞く必要はないね』
『なして?』
『あなた向かっているから、そこに』
『ん?』
『確かめてみなさい、自分の体で』




