第60話
『なんなのそれ?』
『隠シェアマインド』
『かくし・・シェアマインド?』
初めて聞く名前だった。
『シェアマインドの秘奥義たい』
『そ、そんなのがあるの!?』
『ハルは北島順一の死後、シェアマインドをさらに発展させた』
『言ってたわね、順一さんを救えなかった後悔からシェアマインドをより高いレベルにさせたって』
『隠シェアマインドは見えない光の波動を変えるたい』
『光の波動!?』
琴実が言うには、人は誰でも9つの波状の命の光を持っているとのことだった。赤、橙、黄、緑、紫、灰、青、桃、黒の9種類の光の波動だ。この“光の波動”には意味があり、赤が愛を、橙が喜を、黄が楽を、緑が快を、紫が陰を、灰が怒を、青が哀を、桃が憎を、黒が恐を示している。ひとつひとつの光の波動の強さや大きさはひとりひとりで違っていて、その光の波動の強弱によってその人の雰囲気やイメージなどが決まっている。
例えば、ある人は優しそう、ある人は怖そうなどはその人が発している光の波動を、他人が気づかぬところで受けていておおよその人柄を判断しているからだ。優しそうな人は赤や黄の愛とか楽の光の波を強く発していて、怖そうな人は灰や桃の怒とか憎の光の波が強い傾向にある。そういった違いは生きているすべての動物がおのおのに持っていて個々のイメージを形成している。表情や体型や動作や声などの表出した情報からも動物はイメージを描くが、その情報がなくても(姿形を見なくても)動物は光の波動だけで、こいつは安全だ、こいつは危ないみたいなことを直感的に判断している。それはその個体が発している光の波動を無意識のうちに判別しているからだという。
光の波動は人にも動物にも見えない。みんな発しているが誰にも見えない。ただ感じている。
その光の波動を、隠シェアマインドでは操れるというのだ。9つの光の波動を司っているその人の中心部に入り込み、光の波動の強弱を変えることができるというのだ。
この秘術をハルは晩年に会得した。夫北島順一が自決したあとだ。よってこれを継承できたのは南澤だけで、北島には伝わらなかった。ハルはこの秘術を隠シェアマインドと名付け、命が脅かされるようなもしもの時以外使ってはならぬ禁忌技として娘の琴乃だけに密かに教えた。
『そ、そんなのがあったんだ・・・』
姫花には信じがたかった。




