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第59話

 心配した以上に厄介《やっかい》な状態だった。冴子は姫花に八つ当たりしたことでまた自分を追い込んでいた。

『やな女、やな女、やな女。救いようのないやな女。どうしてこんなわがままなんだろう。どうしてこんなことばかり繰り返すんだろう。こんな女死ねばいいんだ。誰も悲しまないし』

 冴子の手には昨晩未遂に終わった道具が握られていた。

『まずい、まずい、これほんとうにまずい! どうしよ!?』

 姫花はここで諫《いさ》めるべきか迷った。しかし声をかければ、冴子は驚くよりも、はやまった行動を取るかもしれない。

 そこで姫花は急ぎ琴実に相談することにした。いま相談できるのは琴実しかいない。姫花の意識が冴子から脱し琴実のもとへ飛んだ。

『緊急事態!』

 琴実は入浴中だった。

『どけんしたとね、姫ちゃん? そげん慌《あわ》てて』

 冴子の危機的状況を早口で告げると、

『ま、まずかね、それは』

 と琴実は半身持ち上げてた。

『どうしよ?』

『ばってん、根本原因がコンプレックスにあるなら、そこを直さんと解決せんばい?』

『そうだけど、悠長《ゆうちょう》なことやってる場合じゃないし、自分でできるならこんなことになってないでしょ?』

 すると琴実は姫花が思いも寄らないことを言った。

『こっちで変えるしかないたい』

『えっ?』

『ばってん、やってよかかどうか、そいが問題じゃ』

『なに言ってるの琴ちゃん?』

『彼女の性格を変える』

『そんなことできるわけないじゃない』

『うんにゃ、それができるたい』

『性格を変える? まさか』 

『本来は禁じ手(・・・)たい。ばってんここで使わにゃいつ使うか』

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