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第58話

 つい姫花は攻め口調になってしまった。

「本当のわたしを知ったらそんなこと言えなくなるわ」

 冴子は自分の本当の姿を姫花たちが知らないと言いたかった。それを知って好きになるはずがないと自己否定するのだ。

「冴ちゃん、そんなのみんな持ってるよ、人に見せたくないとことか、嫌いな部分とか。わたしなんかいっぱいあるよ。だから、あなただけが特別なんじゃない」

「違うのよ、姫ちゃんたちとは。わたしのは絶対に相手を嫌いにさせるどうしようもない陰湿《いんしつ》なものなのよ。あの人一倍優しいオヤブンでさえ怒らせるひとなんだよ、わたしは。こんな人間いないほうがいいんだよ」

「誤解してるって冴ちゃん! オヤブンはそんな冴ちゃんが好きなのよ。いじらしいとことか、自分にだけわがまま見せてくれるとことか。いま相談してくれてるあたしだって、とっても嬉しいって思ってる」

「うそだ」

「どうしてうそなの!」

「姫ちゃんはわかってない」

「ううん、わかってる」

「わかってないって。オヤブンがくれたメッセージ、あれ別れの意味だよ」

「激しい誤解だって、それ。オヤブンは冴ちゃんの意見もっと聞くべきだって言ったんでしょ。完全に仲直りを彼望んでるよ。わからない?」

「ふう、姫ちゃんに相談したわたしがばかだった」

 だったらなぜ相談したんだ、と姫花は沸き起こる苛立《いらだ》ちの感情を押し殺したが、なるほどこれがオヤブンを怒らせた原因かと、なぜかオヤブンに同情したい気持ちになった。

「わかんないんだよ、わたしの気持ちなんて、姫ちゃんには!」

 よっぽどシェアマインドを使おうかと思った。冴子の奥底の気持ちを測るために。でも二人の会話にその隙は許される状態ではなかった。姫花は言葉の無力さを知りつつ、繰り返すしかなかった。

「わかってないなら、わかってあげたいのよ、いい、わかってあげたいの」

「わかってくれなくてもいい!」

 冴子は対話を閉ざし、せっかく来てくれた姫花を急《せ》き立てるように追い出した。

 自分から相談を持ちかけておきながら最後はわかってくれなくていいで相談を打ち切る冴子の身勝手さに、実のところ姫花はほとほと呆《あき》れた。

『こりゃ重症だぞ。オヤブンにも手に負えないのわかる気がする。かといってほっとけないし・・・』

 マンションを出てから姫花はシェアマインドしてみることにした。冴子の本心にアクセスして、打開策を見出すために。

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