第53話
2週間前。
「最近、冴子さん変わりましたね」
篠原里美が言った。里美は冴子と一緒に社内食堂でランチを共にしている。
「そう?」
冴子はきつねうどんを箸でつかんでいる。その表情は柔らかい。
「変わりましたよ」
「どこが?」
「まず声、というか喋り方」
「声変わりかしら? それとも酒焼け?」
言って冴子はケタケタ笑った。
「それそれ、そんな冗談なかったもの」
「どんな喋り方してる、わたし?」
「なんか落ち着きあるっていうか、聞いてて安心するんですよ。以前の冴子さんって、もっとこう自信なさげでか細い声だった気がする」
「そう?」
「それに、表情も違う」
「どこが?」
「特に目のあたりが・・・」
「あっ、その疑惑あるんだ。言っときますが、いじってませんからね」
冴子は優しい目で笑った。とても素敵な笑顔だった。
「そうそう、その目。そこもなんか安心して近づきたくなる感じ」
「近づいてきたら食べちゃうかもね」
そう言って冴子は箸で里美をつまむ仕草をした。
「食べられてもいいかな、冴子さんになら」
里美の目も優しい。里美の表情も柔らかい。冴子につられて。
「あたしだけかしらそんなふうに思うの?」
「どうかしらね」
はぐらかしながらも冴子は嬉しそうだった。
「あと、ふるまいもかな」
「偉そうになったとか?」
冴子は腕を組んで胸を張った。
「そういうんじゃなくて、動作がゆっくりしてて」
「それ、にぶくなったんじゃない?」
「違いますね。しっかり構えている感じがします。しかも無駄な動きあまりなくなって」
「捕食動物がえもの捕まえるときみたいね」
「そんなにあたし食べたいですか?」
「遠慮しとこうかな、きつねうどんでけっこうお腹満たしたし」
二人揃ってケタケタ笑った。
里美はここで本題に入った。
「なにがあったんですか?」




