第50話
「まじか。昨日からやで」
オヤブンが呟いた。雅臣が2日間出勤していない。それも無断欠席だ。オヤブンは姫花に尋ねる。
「ほんまなんも知らんの?」
「知らないわ」
素っ気ない姫花に、オヤブンは二人が喧嘩でもしたのかと思った。
木枯らしが街を包む頃、社内は年末商戦で戦場と化していた。クリスマスは菓子、ケーキが一年で最も売れる。この時期は社員の顔つきが険しくなる。そんなさなか雅臣が行方を眩ました。
「どこでさぼっとんや、あいつ」
オヤブンの声が遠藤に届いた。
「ほっとけほっとけ! こんな大切な時期に来んような奴は。おおかたなにか後ろめたいことでもしでかしたんだろ」
自分のことは棚に上げ遠藤は言った。雅臣は他部署の人間だ。彼の部下ではない。しかし遠藤にしてみれば自分に強請りをかけた者は居なくなってくれた方が好都合、なんなら辞めてもらえばなおけっこうだった。
「そんなこと言ってええんですか遠藤課長。あいつおらんと例のキャンペーンできませんよ」
雅臣は来年度実施する甘辛青春サンドの懸賞キャンペーンのパッケージデザインのとりまとめ役だった。
「かまわん。できる奴は他にもいる。第一、無断欠勤する奴に、そんな大事な仕事は任せられんだろう」
「理由なく休む奴とちがいます。連絡もとれへんみたいやし、自宅見に行ったほうがええんやないですか?」
「そりゃ俺の仕事じゃないよ」
これを聞いていた姫花は、相も変わらぬ上司の冷たさに愛想を尽かした。その時、姫花の意識に囁く者が・・・。
『姫ちゃん』
琴実である。
『紅鷲たい』
『そうね。それしか考えられないわよね』
『堀口を拉致したに違いなか』
『使えなくなったもんね』
『どげんすっかね?』
『シェアマインド使ったほうがいい?』
『うんにゃ、それはやめといたほうがええ。下手したらおいたちに危険が及ぶ』
『じゃあべたに足で情報集めますか』
二人は雅臣の捜索を始めた。手始めに人事課に向かった。




