第48話
紅鷲アジト。ミノルが言った。
「悪く思うな。劉は足がついたのだ」
まさみは震えながら聞いた。
「あ、あたしも殺されるのかい?」
ミノルが冷笑した。
「おまえはリストに上がっていない。まだ働いてもらう」
“まだ”とはいずれ自分もしくじれば屠られることを意味する。それは覚悟せねばならない。この組織に足を踏み入れてしまった以上、逃れることはできない。
彼女はその後も諜報活動を続けた。渋谷の酒場で多くの贔屓客を作り、各方面の業界関係者からマル秘情報を集めた。その中から有益と思しき情報を紅鷲に提供し報酬を得て生活してきた。
まさみが雅臣と出会ったのは数年前。ちょうどその頃、雅臣は前妻との別れ話が持ち上がっていた。そんなある日、雅臣はまさみの店にひとりで立寄った。その際、まさみが彼の悩みを親身になって聞いてやったことが二人の交流の始まりだった。
何度か足を運ぶうちに、雅臣は自分が特殊な能力を持っていると口を滑らせてしまった。
泥酔した雅臣は前妻とのひび割れた関係を、呂律の回らぬ舌でこう嘆いた。
「あいつの、、考えてㇶることは、、わかっちても、、つかンデいおくことバ、、でけないんだな〜〜」
さらに調子に乗ってこんなことを喋ってしまった。
「ぼくはね、、ひとの意識を、、へへ、見んることができんだぜ、、、誰の、こころの中でも入れんだ」
「読心術かい?」
「ちがうちがう、ぼくのたまちいが、ひっ、ひっつくの、相手のこころに」
突拍子もない話に、まさみは信じなかった。
「嘘いいない」
雅臣は色をなした。
「うそ、、じゃねえって!!」
「まさかあ!?」
「でも、、だめだった・・・」
「それ、ほんとうの話かい?」
心の中に入れるとは捨て置けない、俄に興味を引き付けられた。
「ほんと、ほんと〜」
深掘りしてみることにした。
「どんなふうにしてやるんだい?」
ところが雅臣は説明を拒む。
「だめだンめ、説明なんて、、でけないよ、、、死ぬほどつらいんだから、言葉ぢゃ、、ねえの」
「言葉じゃない?」
「そう、なんだね、、高潔な倫理の意識のね、こんちロール」
この時点で彼は高潔な倫理を失っていた。
「おじいちんから、、伝わるすんごいの、共有っていってさ」
「きょうゆう?」
まさみはヒッピーの裏技だろうかと想像した。
「ぜ、ぜひ見てみたいねえ、それ」
「そのうち、ね」
この後雅臣は眠ってしまった。雅臣はこの時のことを全く記憶していなかった。まさみはこの奇妙な情報を紅鷲に報告した。




