第46話
周が一歩中へ入った。
「请关上门(Close the door!)」
周は重い扉を閉めた。
「请出(Show me)」
促されて周がリュックから何かを取り出し声の主に渡している。
「这是什么(What is this?)」
渡したのはフラッシュメモリだ。彼らはデータをインターネットで受け渡ししない。周がデータの中身について説明する。
「ほんとかい」
驚嘆の声は日本語だった。
「原口さん。これはいくらぐらい?」
周も日本語に切り替えた。相手の名は原口というらしい。
「さて、どうだろうね・・・」
原口は口ごもる。
「最新だったら、かなりいくだろうよ」
周は神妙な顔で呟いた。
「でも堀口からもう取れないかもしれない」
原口が訝しい表情を見せる。
「どういうことだい?」
「あれができなくなってきたと言っていた」
「あの技がかい?」
頷く周。
「なにがあったんだい?」
「わからない」
原口は考えている。
「それじゃあ用済みだね」
周が尋ねる。
「どうする?」
「知ってしまったからね」
「杀?(Kill him?)」
原口は黙って頷いた。
周は理解しているつもりだったが、特別な力で紅鷲に貢献してきた堀口への憐憫もないではない。
原口はそんな周の甘い考えを見透かしたように、
「情けは無用だよ。捕まえてきな」
と言い放った。
「知道了(Understood)」
周の目は険しくなっていた。
周が原口に背を向け、もと来た地下通路への扉をくぐる。
その怯えた背を追いながら原口が呟く。
「祝你好运(Good luck)」
ふくよかなその顔、渋谷路地裏酒場店主、まさみだった。




