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第44話

 雅臣の策略とは次のようなことだった。

 遠藤に姫花と琴実を徹底的にいじめさせる。辞めるすんでのところまで追い詰めさせる。彼女たちは助けを求める。そこに自分が現れ彼女たちと交誼《こうぎ》を結ぶ。遠藤を共通の敵に仕立て共同戦線を張り、最後は自分が遠藤を社から追っ払う。自分が設定した悪役をヒロインたちの前で見事退治する結末だ。彼の計略では彼女たちの歓心を得ること間違いない。

 そして最後に彼は彼女たち一人一人にこう請《こ》う。

「今度は僕を救うと思って、君の力《・》を貸してほしい!」

 雅臣は使えなくなりつつある自分の能力に代わって、姫花と琴実の能力を利用するつもりだった。

 こうして遠藤の姫花と琴実へのイジメが始まったわけであるが、もとより遠藤にそういった性分があったのだろうが、いつの間にか彼は進んでイジメを行っていた。

 部分的には雅臣の思惑《おもわく》通り動いた。遠藤のイジメは姫花を苦しめたし、姫花は自分の恋のオファーを受け入れてくれたし、遠藤を共通の敵に仕立てるあたりまでは近づいていた。

 だが琴実は雅臣の策略を事前に知っていた。知っていた上で彼に近づいた。

 琴実は姫花にこのことを頃合いみて知らせようと思っていた。同じ秘術の継承者として彼女達こそが共同戦線を張る必要があると思ったからである。

 雅臣の愚かな策略を知ってしまった彼女たちが彼の邪な目的に加担することはない。

 だが、雅臣はいまだ彼女たちの気持ちが自分に向いていると信じている。

 先日のイタリアンダイニングで姫花が取った行動を、雅臣は琴実へのやきもちだと理解していた。確かにその時まで、姫花はそう思っていた。

 だが、事態は雅臣の思惑《おもわく》通りには動かない。このあと自分にとんでもない災いが降り掛かるなど、彼は知る由もなかった。

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