第4話
続けようとする雅臣に、姫花は先読みしようとシェアマインドを使った。姫花の意識が雅臣の中に入り込む。
(あら〜、お化粧崩れているわ、わたし。さっき直しておけばよかった)
姫花は雅臣の眼を通して自分を見ている。シェアマインドしているということは五感をシェアしているわけであるから、見るもの、聞くもの、嗅ぐもの、食べるもの、触るもの全て雅臣の感覚で伝わる。もちろん心の中の声だって聞けるのである。
雅臣の真意を知りたくて、姫花は彼の奥底を覗いてみた。
すると・・・
『タイプなんだよな・・・』
これはシェアマインドで聞く雅臣の真意の声である。
(まじで・・・!?)
リアルの雅臣が姫花に声をかける。
「北島さん?」
その声が彼の意識の内側から聞こえる。なんとも不思議な感覚である。
「北島さん!?」
もう一度呼ばれたところで姫花は我に返った。体を留守にしているのだ。誰も返事をするはずがない。姫花は慌てて自分の体に戻った。間近に雅臣の顔があって姫花はドキッとした。
「ご、ごめんなさい」
「も、もう、びっくりさせないでよ」
「ちょ、ちょっと考えごとしてたものだから」
雅臣は胸に手を当て安堵の息をつく。
「急に動かなくなるんだからさ」
「驚かしてごめんね」
「大丈夫?」
「全然、大丈夫!」
「ならいいんだけど」
姫花は話題を転じた。
「そんなことよりさ、堀口さん、さっきの話・・・」
「なんだっけ? どっかにふっとんだよ」
「どうしてわたしと話をしたかったのかってことよ」
「ああ、それね。そうそう、それだよね」
「そう」
「その、つまり、北島さん・・・」
「はい」
「いる?」
「なにが?」
「あれ」
「あれってなに?」
「つまり、そのぉ・・・」
(はっきりしないなぁ)
姫花は心のうちで雅臣を応援する気持ちになっていた。
「いま、つき合っているひととか、そういう感じの、いるかな?」
(まわりくどい言い方)
姫花はじれったく思った。
「どうでしょうね」
いったんはぐらかしてみた。
「いるの?」
不安そうな雅臣を見て楽しんでから、
「いないわ」
「しゃー!」
雅臣がガッツポーズをみせる。
「なーにそれ?」
「いやだからさ」
「うん」
「つまり・・・」
(もうほんとめんどくさい)
姫花はしびれを切らせた。
「俺の彼女になって欲しい。そう言いたいんでしょ! ちがうの!?」
雅臣は呆気にとられた。
「ち、ちがわない」
うろたえる雅臣。
「それで、わたしの返事よね。聞きたいのは」
「あっ、ま、そういうことかな・・・」
(最後までめんどくさいわぁ)
「いいわよ。堀口さんで」
雅臣は照れの混じった複雑な表情をしている。
「なにかご不満?」
「と、とんでもございません」
雅臣の言葉の真意を、姫花はまたしてもシェアマインドで覗いた。
『オッケーということ?』
(そうですけど)
『いいって言ったよな』
(言ったって!)
そこでやっと雅臣の表情に笑みがこぼれた。
『だいじにするからね、姫ちゃん!』
(しなさいよ)
『アイシテルよ!』
(最初から、そう言えばいいのよ)
姫花の表情にも笑みがこぼれた。




