第34話
「ずばり聞くんだけど、あなた雅臣さんはどんな関係?」
姫花と琴実は渋谷から二駅離れた三軒茶屋駅ちかくのワインバーに来ている。窓の外は乾いた夜風が枯れ葉落とした街路樹を揺らしている。
(こんな日はシナモンかオレンジのホットワインがいいわね)
店に入って姫花はそう呟いたが、今晩は酔っている場合じゃない。
二人はワインの前に、まずビールでグラスを合わせた。
姫花の質問に琴実は暫し口を閉ざしていたが、口を開いた時、まったく予想しなかった言葉が飛び出た。
「堀口も使えるたい」
姫花はグラスを胸の辺りで止めた。
「なんのこと?」
琴実は言った。
「彼らはいまも共有と呼んどるたい」
「きょうゆう?」
続けて、
「かれら?」
琴実が説明を加える。
「共有とはハルがつけた名前たい、シェアマインドの。ハルのひ孫の代からシャアマインドに呼び方変えとるたい」
「えっえっ、ちょっちょっと待ってよ」
姫花のグラスが大きく揺れる。
「なんのこといってんの?」
琴実はビールを飲み干してフロアスタッフを呼んだ。
「おいには芋焼酎のほうがよか。ばってん、こげな洒落た店にはなかとね」
そう呟いて琴実はフロアスタッフにジンジャーのホット白ワインを2つ注文した。姫花は自分のオーダーしたいものを琴実が先読みしたのかと思った。
「これが焼酎のお湯割りに一番近いけん、姫花さんも試してみなっせ」
(そういうことか)
残っていたビールを姫花も一気飲みした。
続けて琴実はラージサイズのシーフードピザとニョッキと和牛ステーキ2皿を追加注文した。琴実の食欲に付き合っていたらあっという間に画像修正もできないメタボになるだろう。
フロアスタッフが行ってから姫花はささやく。
「ごめん琴ちゃん。整理して言ってくれる。ついていけてないわ」
琴実は頷いて、ゆっくりめに話す。
「南澤ハルの次女南澤琴乃、つまりおいのひいばあちゃんは南澤の枝分かれたい」
「うん、それは聞いた」
「長女北島姫乃は北島の枝分かれたい」
「それも聞いた」
「もうひとつ枝分かれした支流があるたい」
「それが、堀口?」
琴実は頷いた。




