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シェアマインド 〜黄色い空と甘いスモークチーズ〜  作者: 水無月はたち
Chapter8「異なるものを受け止める」
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第24話

(味覚も、こんなに違うの!?)

 彼氏の心移りを脇に、姫花は母から言われたあの言葉を思い出していた。

『姫ちゃん。五感はひとによって全然違うの。あなたの感覚で常識だとするものはひとの常識とまったく違ってるのよ。例えば、誰もがバナナは甘くて、その甘さが同じだと思い込んでる。とうがらしは辛くて、その辛さは同じだと思い込んでる。でもね、実際はバナナの甘さも、とうがらしの辛さも、個体が生まれた時から持ち合わせている他者との比較不可能な味覚だから、ひとが甘いと言うものを、ひょっとしたら他のひとは塩っぱいと認識しているかもしれない。それは通常、生きている間、誰も他者との違いに気づけない。本来、気づいちゃいけない。でもね、シェアマインドを使う者は気づいてしまう。他者との違いを。摂理に背いて。だから、この技を使う者は高潔な倫理で異《い》なるものを受け止め、そして超えていかないといけないの』

 姫花はその母の言葉を思い出している。彼氏の味覚に驚きつつも、高潔な倫理で異《い》なるものを受け止める意味を探っていた。


 姫花が化粧室から戻ってきた。

 雅臣は酔いか気まずさか、顔を赤らめ落ち着きのない愛想笑いをした。

 姫花は彼氏を殴ってやろうかと思った。が、思い直して今夜はとことんつき合おうと思った。

「もう少し飲まない?」

「ここで?」

「まさみちゃんのところへ行きましょう」

 場を変えたかった。こんな洒落た場所だと気が滅入る。

 二人は渋谷のまさみちゃんの店へタクシーを飛ばした。

 まさみちゃんと三人、野球の話で盛り上がった。琴実の話は一切出さなかった。

 姫花は、異《い》なるものを受け止める宿命を背負ったのだし、ましてなお雅臣を自分は愛していたからだ。

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