第23話
チャンスとみて姫花は追い詰めた。
「し、清水から聞いてね」
「オヤブンから?」
「ああ」
雅臣は返事を短く切る。
「本人じゃなく?」
姫花は核心に迫る。
「ち、ちがうよ」
「ふ〜ん恐いわね、社内情報は」
姫花は冷たく笑った。
ここまで追い込んでおけば、きっと雅臣の頭の中には琴実でいっぱいのはずだ。
いまがチャンスだと姫花は思った。
「お化粧室行ってくるわ」
離れた場所から覗くほうが無難だ。
姫花は化粧室の便座の蓋の上から腰掛け意識を雅臣に飛ばした。
姫花は雅臣にシェアマインドしている。
最初に感じたのは雅臣が思った以上に酔っているということだ。同じ量のビールしか飲んでいない。が、酔いは人によって違う。姫花はいま雅臣の酔いをシェアしている。
(わたしもなんだかたくさん飲んだ気分だわ〜)
だが酔っ払っている場合ではない。酔いに任せてガードが甘くなっている彼の心を探らなければならない。
雅臣の心の声が聞こえてくる。
『やばいな、感づかれたかな?』
(何をかな?)
『琴実にアプローチしていること』
(やっぱり・・・)
『姫花に喋ったんじゃ・・・』
(喋らなくてもわかっちゃうのよね)
『弱ったな』
苦し紛れに雅臣がスモークチーズを口に放り込んだ。
(んっ!)
姫花は驚いた。
(甘い!?)
なんと雅臣が食べたスモークチーズが甘かったのである。
(ほ、ほんとに?)
姫花は食べた物を再確認した。確かにスモークチーズだった。




