第21話
試合は2対1で渋谷ガールズアイルが辛勝した。
振り返ってみれば、オヤブンの言ったとおり、周の球をまともに打てたのはあの技能実習生だけだった。つまり1安打1失点で周は抑えたわけである。それよりも驚くべきは攻撃面だ。琴実のあのサヨナラヒットは奇跡に近かった。
試合の翌日、オヤブンはメンバー全員にねぎらいのメールを送った。
「みんなごくろうさん! このチームやったら全日本女子軟式野球大会で出れるで!」
と、たいそうご機嫌だった。しかしまさか全国大会まで持ち出すなど、のぼせあがりもいいとこだと皆誰もこれを無視したが、冴子だけは、
「やれそうな気がする」
と根拠のない自信をみせた。
姫花はというと、よほど、
(焼き肉とチョコパフェおごるんじゃなかったっけ?)
と返したかったが、シェアマインドで知り得た情報なのでやめた。
そんなことより雅臣と琴実のことである。二人の関係である。
いけないと思いつつ、姫花は業務中に何度か琴実にシェアマインドを試みた。何か雅臣とのことで自分の知らない秘密を掴めるかもしれないと思って。しかし彼女は今朝からそれどころではなかった。
本日の遠藤の生贄が琴実だったからだ。琴実の業務にいちいち難癖をつけていた。
この日はまた特別遠藤の機嫌が悪かった。理由は昨日の試合、自分だけ蚊帳の外だったというみたいだ。その腹いせに琴実が彼の標的になっていたのだ。
なので、琴実から業務以外の情報は何も引き出せなかった。
ならばと、姫花はもうひとりの対象に接近を試みようとした。琴実に褒めて欲しいとまで言わせたぐらいだから、きっと彼にも何かやましいことがあるはずだ。
が、遠藤のご機嫌が斜めなのでうかうかとできなかった。いつ自分に飛び火してくるかわからないからだ。
ということで、姫花は今晩彼を誘い出すことにした。




