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第17話

 それから早姫の苛烈《かれつ》な教導が始まった。それは生と死の端境《はざかい》を体験する想像を絶する修行だった。姫花は逃げたいと思った。しかし早姫は逃げさせてくれなかった。修行は毎晩続いた。睡眠はほとんど取らせてもらえなかった。混濁《こんだく》する意識のなか姫花は何度も何度も気を失った。意識がどこかに飛んで切れかかっていた。

 そして、その時になってついに・・・

『姫ちゃん!?』

 早姫が呼ぶ。

混濁した姫花の意識は宙空《ちゅうくう》、空高く薄い板の上に乗っているようだった。

『お、おかあさん・・・!?』

『幽体離脱に成功よ』

『そ、そうか、わたし出れたんだ』

『わたしが見える?』

『見えるけど、なんだか遥か下にいるみたい・・・』

『そこから飛び降りてみなさい』

『えっ、ここから?』

『投身自殺する気持ちで』

『そんな気持ちになれないよ』

『なれないじゃない! やりなさい!』

『できないよ』

『だったら、ずっとそこで浮遊し続けてなさい、死ぬだけよ』

 早姫は娘を追い詰める。

『いいんだね!? 帰ってこれないよ!』

 姫花は恐怖で動けない。

『飛び降りなさい!』

 こんな高さから飛び降りたら間違いなく死ぬ。姫花は自分の肉体がまだ意識とくっついている感覚が残っていたから飛び降りれば肉体が滅(めっ)すると思った。

 しかし、それしか残されてないなら・・・

『もういい、もういいよ! どうにでもなれ!』

 そして姫花は架空の雲間から飛び降りた。投身自殺するつもりで。助かろうなどとつゆほども思っていなかった。

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