第16話
「シェアマインド?」
「他人の五感をシェアできるの。あなたの考えていること、感じていること、すべてお母さんにはわかる。あなただけじゃない。他の誰の考えていることでも知ろうと思えば知れる」
「うっそ、こわ!」
「この術を、あなたが継承するのよ」
「ま、まじで!?」
興味を覚えないでもなかった。他人の考えていることがわかるなんて誰も持ち合わせていない特権だ。面白そう、はじめに姫花が抱いた気持ちだ。
そう思った矢先、早姫から叱責の声が飛んだ。
「面白くなんてちっともないのよ。あなたこれからとっても辛い経験をすることになるの」
何も語っていない。しかし、すべて母に読まれていた。
「参りましたお母さん、それでわたしは何をすればいいでしょう?」
姫花は両手を上げた。
早姫は冷静にこう言った。
「手始めに、思考で動かしている脳を止めてみようか」
姫花は母の言っていることがさっぱりわからなかった。
「どういうこと?」
「すべてのことを言語で考えないってことよ」
それでもなんのことか理解できない。そんな表情していたのだろう母が例を挙げてくれる。
「例えばそうね〜、生まれたばかりの赤ん坊と同じ境地になるってことかな」
そんなこと言われても、赤ん坊の頃の記憶なんて誰も持ちあわせていない。姫花はますます頭が混乱した。
「でもそれはあくまでも導入部分。本分は死ぬことよ。人は生まれる時と死ぬ時に二度刹那の生と死の端境を体験する。その時誰でもシェアマインドに似た体験をしている」
「そ、そうなの?」
「ええ」
「でも聞いたことある。臨死体験した人は体から意識が抜け出て自分やまわりの景色を端から見ていることがあるんだって」
「それ幽体離脱ね。シェアマインドは幽体離脱よりさらに上の覚悟とコントロールが求められるの。生と死の端境、即ち臨死を、わたしたちは生きている間中に自由に引き出すことができる。これがシェアマインドという技よ」
恐怖のあまり姫花は尋ねてしまった。
「ひょっとしてわたし死ぬの?」
しれっと早姫は言う。
「死ぬ間際の精神状態まで行くことになるわね。そこに達しないと極意は会得できないから」
姫花には理解できなかった。理解したいとも思えなくなった。面白いどころかただただ怖かった。




