第15話
姫花、高校1年生、春4月。姫花の部屋。
「これは絶対人に話しちゃダメよ」
いつもと違う母の様子に姫花は身構えた。
「お母さんから習うことって、何かすごい秘密なの?」
「そうね、女だけの秘密ね。お父さんと卓君にも話せないから」
母の表情にいつもの優しさはなかった。
「人が考えていることを盗み見できたら、姫ちゃんどうする?」
「な〜にそれ? そんなことできんの?」
姫花は疑わしい目で母を見た。
すると早姫は、
「姫ちゃん。伸くんとはどう? 仲良くやってる?」
「えっ!?」
言ったはずはない。最近できた彼氏のことは。ましてや彼氏の名が伸一郎で自分が伸くんと呼んでいるなんて。
「ど、どうして!?」
「自転車置き場で、コクられたのよね?」
「な、なんでそこまで!?」
「それくらいならだいたいの母親はわかるものよ。でもわたしはそこからさらに、あなたがいま何を考えているかがわかる」
「お、おどしているの?」
早姫は目を閉じている。
「お母さん?」
返事をしない。もう一度呼んでみた。
「お母さん!」
『鬼さんこちら』
おどけた母の声は、姫花の頭の中で聞こえた。
「えっ、えっ?」
混乱する姫花。
「な、なにが起こってるていうの!?」
そして次の声は目の前の母からだった。
「姫ちゃん。次の土曜日、お買い物行こうか?」
そのスイッチもさることながら、急な母からの誘いに姫花はますます混乱する。
「だ、だめよ」
また母が目を閉じている。もしや、と姫花は自分のオデコあたりをさする。
「そ、その日予定あるもん」
母の声はしない。
「お母さん!?」
まぶたを開けて母はにやけている。
「そうよね、伸くんの部屋で一緒に過ごすんだものね」
「な、なんでなんで!?」
訳がわからなくなった。
「ちょっと早くない、つき合ってまだひと月でしょ?」
目の前の母親は自分の考えていることをすべてわかっている。確かに姫花は彼氏と約束していた。次の土曜日、彼氏とふたりっきりの時間を持つことを。
年頃の娘を持つ母親としては、こう直截的な言い方は娘の反感を買いかねない。しかし、早姫は娘の心の真ん中を射抜くことで彼女にこの秘術のすさまじさを教えたかった。
「シェアマインドという技よ」




