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第11話

 春に結成を試みた女子サッカー部と女子軟式野球部。メンバーを募ったが、結局9人をかき集めるのが精一杯でサッカーチームは断念して野球チームだけにした。

 野球チームの名は、渋谷ガールズアイル。都心に浮かぶ女島という意味だ。

 一人の欠員も許されないこの状況で、来月、対外試合を行うことになった。

 メンバーは皆、尻込みしたが、オヤブンと雅臣が、実践から学ぶことのほうが多いと説得にあたり初陣に臨むことになった。だが、決めてはなんと言っても人事課の村上優の一言だった。村上は社歴20年のイサワカ女子では元締め的存在である。ボディビルダーでもありその鍛えあげられた体には余分な贅肉はほとんどない。

「これは興行試合よ、プロモーションよ。仕事だと思いなさい! いいわね!」

 村上のこの一言に誰一人反論できなかった。オヤブンと雅臣でさえ村上の威圧感に圧倒された。

 渋谷ガールズアイルは結成以来、都内の河川敷グラウンドで練習してきたが、メンバーがきちんと集まったことはほとんどない。まともにキャッチボールできる者だって半分いるかどうかの超弱小チームだ。

 ただ一つ救いがあった。村上と同じ人事課の周麗華《しゅうれいか》だ。彼女は学生時代、硬式野球部に所属していた。補欠だったが、控え投手として男子と同じメニューをこなした。軟式野球でしかも女子だけとなれば如く向かうところ敵なしのはずである。

試しにオヤブンが彼女のボールを受けてみたが、あまりのスピードに危うく顔面捕球しそうになった。

 が、問題はこのボールを誰が捕るかだった。女子チームである。キャッチャーも当然女の子であり、オヤブンが受けるわけにはいかない。そこに朗報が入った。

マーケティング課の派遣スタッフ篠原里美が高校時代、ソフトボール部でキャッチャーをしていたらしいのだ。しかも彼女のチームは強豪校でインターハイ準決勝まで進んでいた。

その話を姫花が里美から聞いた。姫花が里美をグラウンドまで引っ張って行き、周のボールを捕らせてみると彼女はなんなく捕球できた。

オヤブンと雅臣は大喜びで、急遽チーム編成方針を変えて、里美をメンバーに加えることにした。

 こうして渋谷ガールズアイルは強力なバッテリーを得ることができた。


 試合1週間前の日曜日、河川敷グラウンドにメンバーが招集された。不安を口にするメンバーに、最初に発破をかけたのは、村上だった。

「はじめから気持ちで負けちゃだめよ。やるからには勝つんだからね!」

 オヤブンも皆を励ました。

「村上さんの言うとおりや、勝つで。っていうかおまえら負けるはずあらへんし」

 さらにオヤブンは、

「大丈夫や! 1点とれば勝ちや。周のボールはぜぇったい打たれへん」

(ほんとかしら?)

 疑わしくて姫花はオヤブンにシェアマインドを試みた。

 見える景色がオヤブンの視界に変わる。

 ところが、オヤブンの本音そっちのけで姫花を驚かす事態が。

(えっ、うそ!)

 なんとユニホームの色が変わっていたのだ。確かユニホームは鮮やかなブルーだったはず。しかしオヤブンの視界ではこれが真っ黄色に見えた。

 さらに驚いたことに、空の色までが黄色掛かって見える。今朝の天気は晴天。気持ちのいい青空が広がっていた。それが突如としてオヤブンの視界では青空が黄色い空に変わっていた。

(色彩って、人によってこんなに違ったりするの!?)

 ブルーだと認識していた自分の色彩感覚が他人の目を通すと黄色になっている。ひょっとすると、他の人にはもっと違う色に変わっていたりするのかもしれない。

 いまさらながら、姫花はこうした個体特有の違いを発見できるシェアマインドに、驚きを通り越して怖ささえ覚える。

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