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裏切りのオレンジジュース

掲示板や店のレビュー欄は、

隠語と身勝手な欲望が、

まるで腐った沼のように渦巻いていた。


『本指確定。最後まで抜かりなし』

『この娘は、こちらの要求を断らない』

顔も名前も知らない男たちが、

匿名という盾の陰から、彼女という存在をただの「使い捨ての道具」として値踏みし、

その肉体からどれだけの蜜を搾り取ったかを競い合う言葉を汚物のように撒き散らしている。


そんなドブ川のようなレビューの中で、私だけは、彼女を「一人の人間」として敬いたかった。

「とっても可愛くて、優しい天使でした。

本当におすすめです」


震えるほど純粋な感謝を一行だけ残した。それが、彼女への唯一の誠実さだと信じていたからだ。

返信は、その夜のうちに届いた。


『待ってますね。絶対。◯◯さん、

優しくて大好きです』


その文字を見た瞬間、私の胸の奥は、まるで子供のように跳ねた。あの時間は夢心地で、まるで高校生に戻ったような気持ちだった。メッセージをもらっただけで、目頭が熱くなった。


程なくして、彼女の新しい出勤日が表示された。一時間半という、あまりにも短い枠。

それでも、私は迷わず予約を入れた。たとえわずかな時間でも、またあの「天使」に逢いたかった。


「またお会いできますね」


そう送った私への、


彼女の返事はそっけなかった。「はい……」

だが、私はまた、あの日のホテルで彼女を待つ。

だが。


「……何してんだ、」

三十分、一時間。時計の針が、私を嘲笑うカウントダウンを刻み続ける。

誰もいないホテルの部屋。 冷え切った静寂が耳を刺す。


店に電話を入れた時の、あのフロントの男の、

鼻で笑うような声が忘れられない。


「いや……彼女、連絡取れないっすね。バックレっすかね。クーポン出しとくんで、今日は帰ってください」


プツリと切れた通話の音。その瞬間、視界が真っ赤に染まった。


「ふざけんなよ……あのクソ……っ!!」


胃の底から、どす黒い汚泥が逆流してくる。

『天使』?

笑わせるな。あいつも、あの掲示板で執拗な欲望を垂れ流しているクズどもと、

それを安く切り売りする商売女の、

ただの共犯者だったわけだ。


「やっぱり騙してたのか。所詮、身体売ってるような汚い小娘だ。何を期待してたんだ、

死ねよ、本当に消え失せちまえ」


冷蔵庫にポツンと残された、二度目のオレンジジュース。

彼女が好きだと言ったから用意した、あの冷たい飲み物は、今やただの『ゴミ』だ。結露が机を濡らし、私の惨めさを形にしている。


心の中で、汚い言葉を彼女に浴びせ続ける。吐き捨てれば吐き捨てるほど、喉の奥が血の味で苦くなる。


やり場のない怒りを、別の「商品」で埋めようとしたのが間違いだった。

やってきた女の、あの死んだ魚のような目。

「……早く終わらせてくんない?」

マグロのように横たわる肉の塊を抱きながら、私は、自分の魂がボロボロに崩れていく音を聞いていた。


「勘弁してくれよ……絶望しかねえだろ、こんなの」


行為のあと、ホテルを出るときの足取りは、まるで泥沼を歩いているようだった。


ついてねぇな。また吐き捨てる。


夜風に当たりながら、私はまた、地面に唾を吐くように、自分の真っ黒な感情を吐き捨てる。

あの、純粋だと信じ込んで書いた自分の口コミが、今や世界で一番滑稽な

「遺書」

に見えて仕方がなかった。


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