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第85話_殲滅戦―聖痕の神罰執行隊―

――ロザリア視点


南方は、見渡す限りの草原だった。


「たぶん……

 元は広大な田畑だったのかな」


先頭を駆ける女性。

《粛清の能天》ナタリーが呟く。


視界に入った魔獣は、

彼女の双銃によって次々と撃ち抜かれていく。


遠距離から飛来する魔獣の攻撃は、


《金剛の力天》ギルバートの障壁魔法が、

ことごとく受け止めていた。


「少し離れた場所に、

 大規模な魔獣の群れを確認したぞ」


空から声が降ってくる。


《断罪の智天》レオン。


魔導の光翼を広げ、

超高速飛行を得意とする魔導士だ。


「行きましょう」

私は仲間へ声を掛けた。


街道を抜けた先――。


そこには、およそ五千頭にも及ぶ

魔獣の大群が待ち構えていた。


「ローちゃん……。

 さすがに数が多いね」


ナタリーが少しだけ不安そうに呟く。


「大丈夫よ」


《スティグマ》の四人。


私は仲間を信じている。


――問題ない。


私は戦場へ駆け出した。


先陣を切ったのはナタリーだった。


群れの中央へ滑り込むように飛び込み、

淀みなく詠唱を紡ぐ。

挿絵(By みてみん)


詠唱――。


『――叛逆は許さず。 

 安寧の祈りを欺け。』


『我が双銃が紡ぐは――。

 慈悲すら逃れ得ぬ、弾丸の嵐。』


『果てせ。穿て――。

 無へと還れ――。』


「――パニッシュメント・トリガー

 (粛清の引き金)!!」


――ドドドドドォォォンッ!!


二丁の魔導拳銃デバイス《ウリエル》から、

暴風のような魔力弾が吐き出される。


ナタリーは戦場を縦横無尽に駆け抜けた。


踊るようなステップ。


ゼロ距離射撃。


跳弾すら利用した予測不能な弾道。


標的となった魔獣は、

自分がどこから撃たれたのか理解する暇もなく、


全身を撃ち抜かれ、

蜂の巣となって消滅していく。

挿絵(By みてみん)


「さすがね」

私は思わず感嘆した。


ギルバートも動く。


大盾型デバイス《メタトロン》を構え、

魔獣を次々となぎ倒していく。


その盾は、

防御だけの武器ではない。


「うむ」


深く息を吸い込み、

《メタトロン》を大地へ叩きつける。


巨大な黄金の障壁が城壁のように立ち上がった。


だが――。


真の脅威はここからだった。


ギルバートの双眸に、

鋼のような光が宿る。


詠唱――。


『――動揺を排し。

 柔弱のことわりを欺け。』


『我が大盾が紡ぐは――。

 万軍すら逃れ得ぬ、金剛の衝撃。』


『砕け。 響け――。

 大地の底へ還れ――。』


「――アイアン・フォートレス

 (不落の要塞)!!」


――ドゴォォォォンッ!!


大盾から、

超高密度の衝撃波が扇状に解き放たれる。


まるで巨大な破城槌。


押し寄せる数百頭の魔獣が、


骨を砕かれ、


肉を押し潰され、


そのまま圧殺された。


衝撃波は大地を削り取りながら進み、


魔獣の群れをごっそりと消し飛ばす。


残されたのは、

平坦に均された大地だけだった。


「やるわね。

 詠唱だけは流暢なのも、

 何とかしなさい」


私は苦笑しながら言う。


「ははっ」

レオンが笑う。


「う……む……」


ギルバートが少しだけ肩を落とした。


二人だけで、

すでに二千体近くを討ち取っていた。


だが――。


まだ多い。


「俺が行こう」

空からレオンの声。


魔導の光翼が眩く輝く。


キィィィン――。


重力を無視するように急上昇。


戦場を見渡し、


手にした円刃型デバイス

《ラファエル》が高速回転を始める。


そして急降下。


レオンは冷静に詠唱する。


詠唱――。


『――迷妄を断ち。

 無知の生を欺け。』


『我が円刃が紡ぐは――。

 光すら逃れ得ぬ、断罪の閃光。』


『穿て。 断て――。

 冥府へ還れ――。』


「――ジャッジメント・スライサー

 (断罪の円刃)!!」


――シュゥゥゥゥゥン!!


《ラファエル》が緑の閃光となって放たれる。


空中で数十枚へ分裂。


幾何学的な軌道を描きながら、


戦場全域を縦横無尽に駆け巡った。


それは、


死の刃の網。


分裂したチャクラムが、

正確無比に魔獣を切り裂いていく。


レオンが戦場を一周する頃には、


魔獣の群れは、

刈り取られた草のように崩れ落ちていた。


《ラファエル》が手元へ戻る。


静かに受け止め、

レオンは着地した。


背後では、

数え切れない魔獣が光となって消えていく。


残るは約二千体。


「……十分だ。よくやってくれた。」


私は仲間たちへ労いの言葉を掛ける。


聖王教会の精鋭部隊。


聖痕の神罰執行隊(スティグマ)》。


自然と笑みがこぼれた。


「我が名は――《灼熱の熾天》ロザリア」

挿絵(By みてみん)


大剣型デバイス《レミエル》を両手で構える。


白銀の刀身が、

魔力に呼応して眩い灼熱へ染まる。


周囲の草木は一瞬で炭化し、

大気が熱膨張によって悲鳴を上げた。


――殲滅型魔導士。


その本領が解き放たれる。


残る二千体の魔獣。


本能的な恐怖に震えながらも、

なお私へ向かってくる。


だが――。


もう遅い。


私は深く息を吸い、


大剣を天へ掲げる。


絶対の審判を告げる詠唱が響いた。


詠唱――。


『――有象を灰とし。

 不磨の真理を欺け。』


『我が大剣が紡ぐは――。

 万物すら逃れ得ぬ、

 天焦あまがす業火。』


『燃え上がれ。

 灰燼とせよ――。

 塵埃へ還れ――。』


「――プラズマ・カタストロフ

 (熾天焦熱波)!!」

挿絵(By みてみん)


――ゴォォォォォォォォォッ!!!


《レミエル》が振り下ろされる。


放たれたのは炎ではない。


すべてを分解する、

超高熱の魔導プラズマ。


蒼白い光の奔流が、

扇状に戦場を覆い尽くす。


押し寄せる二千体の魔獣は、

悲鳴を上げる暇すらなく、


肉体ごと、

跡形もなく消滅した。


熱波が過ぎ去った戦場には、

魔獣の影すら存在しない。


ただ――。


赤く融解し、

ガラス化した大地が、


陽炎を揺らしながら広がっていた。


戦場には、

もう敵影は一つも残っていない。


私は《レミエル》を肩へ担ぎ直し、


静かに息を吐く。

挿絵(By みてみん)


「任務――完了ね。」


作者( ゜Д゜):殲滅戦後、次に行く前に……。

オコジョ:前に……?

作者( ゜Д゜):次話は毎章あるサービス回だぜ!

オコジョ:なんだと……(やったぜ!)

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