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第83話_殲滅戦―各戦線始動―

――セレナ視点


東の街道。


港湾都市へと続く道を、

三人の魔導士が進んでいた。


王国十二守護騎士第七位。

魔力ランクS+。総合SS。


《静寂》フィオナ。


白いフードを被った、

薄銀色のロングストレート。


黒い目隠しで瞳を隠した、

“盲目”の少女。


浮遊型ビットデバイスを操り、

妨害・対魔導士戦を得意とする魔導士。

挿絵(By みてみん)


(私は彼女のこと……

 ほとんど知らないのよね……)


セレナは隣を歩くフィオナを横目で見た。


「目は見えないの?」


ぽつりと問いかける。


「………」


沈黙。


代わりに答えたのは、

もう一人の少女だった。


「セレナさん」

おっとりした声。


「彼女……

 声も出せないのよ」


王国十二守護騎士第十二位。

魔力ランクS+。総合S。


《慈愛》エルゼ。


淡い桜ピンクのゆるふわロング。

淡いピンクゴールドの瞳。


弓型デバイスを扱い、

回復・支援を得意とする魔導士。

挿絵(By みてみん)


「デバイス経由で"筆談"はできるけど……」


エルゼは穏やかに微笑む。


「彼女、あまり話すタイプじゃないの」


デバイスが文字を浮かべる


『……沈黙。』


――沈黙。

――静寂が訪れる。


「……私たちはこのまま東へ進んで、

 港湾都市へ向かう」


セレナは作戦を確認するように口を開いた。


「海に魔獣が多いそうよ」


そして、

少し声を落とす。


「それと――

 海竜の討伐」


海に巣くう魔獣群。


その頂点に君臨する海竜。


セレナは杖型デバイス《クリスタニア・レイヴン》を強く握った。


王国十二守護騎士第三位。

魔力ランクSS+。総合SS+。


《蒼氷》セレナ。


蒼銀色の髪。

氷のように冷たい蒼い瞳。


広域制圧・超火力氷結魔導を得意とする魔導士。


三人は進む――。


「………」


セレナは思った。


自分も、率先して話すタイプではない。


必要なことだけ話せばいい。


それで十分だ。


だが――


無言。


おっとり。


(正直……苦手な組み合わせね……)



――――

――


時空管理局日本支部・訓練室


「今日の最後は……

 魔力について話すわ」


ミスティ提督による授業も、いよいよ終盤だった。


「やっと最後だ……」


「疲れましたわ……」


アリスとエリザの本音が漏れる。


ミスティは気にせず授業を続ける。


「魔力の大きさ……、最大値は、

 先天性で決まる割合が大きいわ」


「瞳にも魔法資質が現れる場合があるわ」


楓は、静かに聞いている。


「有名なのは聖女の翠の瞳ね」

ミスティが言う。


「あの透き通る翠色は、

 “時間系統”の魔法資質を示す証よ」


「「へぇ~」」

二人が感心する。


「オッドアイ――

 異色瞳も珍しいわ」


「異なる魔力資質を備えている可能性が高いのよ」


楓がぽつりと言う。

「アリス……すごい……」


「えへへ」

アリスが照れる。


エリザが身を乗り出した。


「紅い瞳には何か意味がありますの?」


ミスティが少し考える。


「エリザの場合は血筋ね」


「名門貴族シュタイン家には、

 何代にも渡って王族級の血が混ざっているらしいわ」


「詳しくは私でも分からない」


ミスティが続ける。


「ただ、その紅雷を見て――」


「上層部が《紅王権》と名付けた」


「王権……気になりますわ」


「その話は長くなるから、また今度ね」


ミスティは話題を切り替えた。


「あと、感情の高まりで

 魔法が発動するタイプもいるわ」


「精神感応症候群――」


空気が少し変わる。


「天才と呼ばれる魔導士の中には、このタイプも多い」


アリスがぽつりと呟く。

「怒らせると強いタイプ?」


その瞬間。

全員の視線が楓へ向いた。


(いや、楓は純粋に魔力量が高いだけだが……)


「……むぅ」


楓が頬を膨らませた。


「魔力は先天性で決まる」


ミスティが締める。


「色々な性質や系統があることを覚えておいて」


「「はい!」」


本日の勉強は終了。


アリス、エリザ、楓、シエル、レギは帰路についた。


俺は受付の片付けをしながら考える。


『魔力は、先天性で決まる』


「………」


(……確かにそうだ。)


(魔力は素質が全て。)


だが――


もし後天的に、その素質を得る手段があるなら。


それは。


魔法世界において――


誰もが願う、"欲望"そのものになるだろう。



――――

――


港湾都市


道中の会話はなかった。


沈黙するフィオナ。


穏やかに微笑むエルゼ。


セレナは、少し限界だった。


都市内部にも魔獣がいる。


――魔獣が飛びかかる。


セレナは睨む。

その瞬間――。


魔獣は氷漬けとなり、砕け散った。

挿絵(By みてみん)


魔法発動に言葉すら必要ない。


感情。


意思。


指向。


それだけで発動する魔法。


精神感応症候群――。


「ちっ……」


白い結晶が周囲に現れる。


可視化された魔力。


セレナは杖型デバイス

《クリスタニア・レイヴン》を握る。


イライラする。


この怒りは


海竜にぶつける。


――東は戦う。



――――

――


南。


《スティグマ》の四人は街道を進む。


向かってくる魔獣を次々と殲滅していく。


「これでラストかな」


ロザリアが《レミエル》を両手で振り抜く。


灼熱の一閃。

挿絵(By みてみん)


魔獣群が一掃された。


「ローちゃん、少しペースが速いよ」

ナタリーが苦笑する。


「わかった」


ロザリアが息を吐く。


「少し気が立ってたみたい」


「いつもありがとね」


「それが私の役目だから」


ナタリーが微笑む。


残る二人も合流した。


《金剛の力天》ギルバート。


《断罪の智天》レオン。


南はとにかく魔獣の数が多い。


「ローちゃんは道中、魔力温存で」


ナタリーが双銃を構える。


移動しながらの精密射撃。


陸戦機動型の本領。


防御のギルバート。


空中支援のレオン。


そして、殲滅のロザリア。


聖痕の神罰執行隊(スティグマ)


四人の連携が輝く。


――南は動く。



――――

――


西。


郊外の奥。


広大な森林樹海。


若い局員が報告する。


「西側は広大な森です」


「大森林には隠れる場所も多く、

 『強欲の夜帳(ハプギーア・ナハト)』の拠点がある可能性があります」


「ふむ……」


ヴィンセント提督が考え込む。


「森、ね……」


沈黙。


そして。


「私はね」


提督が静かに言った。


「蟲が嫌いでね……」


「はあ……?」

局員は困惑した。


(突然、何の話だ。)


提督が薄く笑う。


「嫌いな場所に、わざわざ拠点なんて作らないだろう――」


「そういうジョークだったのだが」


「………」

空気が冷える。


「森の奥まで殲滅に行くのも手間でしょう」


提督は淡々と言った。


「我々は防衛に力を入れましょう」


陣地を築く。

溢れ出た魔獣だけを迎撃する。


――防衛戦略。


広大な森林樹海。


不気味な空気が漂う森。


だが、動かない。


――西だけが、静かすぎた。

作者( ゜Д゜):魔獣からの都市解放は順調に進む。

オコジョ:おいら、気づいちまったぜ。不穏なキャラが多いことを。

作者( ゜Д゜):おや?オコジョの予想は信用がないのよ。

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