第82話_殲滅戦―北部戦線―
惑星タタロスに現存する、人類の生活圏。
そこから少し離れた場所。
北の街道の先に存在する都市群――。
否。
もはやそこは都市ではない。
魔法生物が大量発生し、完全に旧都市へと変貌していた。
その跡地へ、二人の人物が進んでいた。
「旧都市にいる魔獣の殲滅だな」
身の丈ほどもある長銃型デバイス。
《ディスタンス・ジャッジメント》。
それを背負う巨漢の騎士。
王国十二守護騎士第四位――ガイ。
隣を歩くのは、巨大な鎌型デバイス
《グラビティ・ヘカテー》を携えた妙齢の魔女。
王国十二守護騎士第二位――イザベラ。
「えぇ」
イザベラが穏やかに答える。
「殲滅後は、
そのまま北の街道を抜けてぇ、
いくつかの都市を解放よぉ」
「その後、
本命の北の山へ向かうわぁ」
彼女の視線が、遠くの巨大山脈へ向く。
「あそこに、
かなり強力な竜種型魔獣が巣くっているそうよぉ」
ガイがニヤリと笑った。
「当たりだな」
今回の作戦。
各組織の主力を東西南北へ配置し、
円形に生活圏を拡張していく。
北・東――エリュシオン魔導王国。
南――聖王教会。
西――時空管理局。
各方面でハイランク魔導士たちが、
魔法生物の殲滅にあたっていた。
二人は山脈を見据える。
「魔力が濃いな」
ガイが呟く。
「街道に出てきてる雑魚は無視するぞ」
「そうねぇ」
イザベラが微笑む。
「雑魚は
従軍魔導士たちに任せましょう」
「あぁ」
ガイが短く答える。
「敵主力は、二人で十分だ」
「行くぞ――」
王国十二守護騎士。
第二位と第四位。
最上位戦力ペアが、北部戦線を進む。
――――
――
時空管理局日本支部・訓練室。
「魔法生物の生態について説明するわ」
簡易机と椅子が用意された訓練室。
アリスたちは、ミスティ提督による授業を受けていた。
「……何故、俺も……」
祐司の呟きが虚しく消える。
そう。
何故か授業に参加させられていた。
「受付業務はもう良いから」
ミスティが当然のように言い。
「来なさい」
強制参加だった。
(レギが、
なんでコイツがいるんだって顔してるな……)
すると。
「なんで、此奴がいるのだ?」
レギがそのまま口にした。
「………」
シエルが静かに口を開く。
「レギ」
「そういうことは、口に出さないものだ」
フォローになっていない。
「………」
「ごほん」
ミスティが咳払いした。
「授業を続けるわ」
全員が前を向く。
「魔法生物は、魔力が無いと存在できない」
「つまり、魔法世界であることが発生条件よ」
楓が静かに補足した。
「強い魔法生物は……
魔獣とも呼ばれる……」
「そうね」
ミスティが頷く。
「魔法生物のランクや種別については、
また今度詳しく説明するわ」
「まず覚えるべきことは――」
ミスティの声が少し強くなる。
「魔法生物には基本的に物理攻撃は効かない」
「弱いスライムなどは例外だけど、
魔獣クラスになると、魔力を纏った攻撃か、魔法でしか倒せないわ」
「……スライム
……潰せてない……」
楓が小さく呟きながら、手をニギニギした。
その瞬間。
シエルとレギが同時にビクッと反応した。
「……?」
(何か思い入れでもあるのか……?)
ミスティは気にせず授業を続ける。
「魔法生物は魔力を好むわ」
「魔力が濃い場所では、強力な魔獣個体が発生しやすい」
「魔法都市には魔力炉があるから、そこを目指して移動する魔獣も多いの」
アリスとエリザが真剣に聞いている。
「そして、
魔獣に荒廃させられた世界では――」
「特に強い魔獣が、魔力溜まりに巣くっている場合もあるわ」
「「へぇ~」」
二人が同時に声を漏らす。
(……魔力溜りか……
アリス、エリザ……本当に分かってるのか……。)
俺はアリスに視線を向ける。
「………」
プイっと
視線を逸らすアリス。
「――次は、倒し方よ」
ミスティが話を進める。
アリスの質問。
「魔法でしか倒せないんですよね?」
「そうよ」
ミスティが頷く。
「魔法でダメージを与えて、体を消滅させる方法。」
「その場合、魔法生物は、体内コア――魔結晶を落とすわ」
「魔結晶は、魔力が結晶化したもの」
「高濃度魔力地帯や、強い魔獣の体内に発生しやすいわ」
エリザが質問する。
「カートリッジにも使われているものですわよね?」
「そう」
ミスティが頷いた。
「二人のカートリッジシステムに使われているのが、それよ」
「「へぇ~」」
そして、
ミスティの声が少し鋭くなる。
「ただし――
効率的な殲滅を目指すなら」
レギが答えた。
「魔法生物の体内コアを直接砕くだろ」
「正解よ」
「その場合、魔結晶は残らないけど、
殲滅速度は圧倒的に上がるわ」
シエルが補足する。
「素早く動く魔獣のコアを狙うには、繊細な魔力制御が必要だ」
「えぇ」
ミスティが頷く。
「そんな芸当ができる魔導士は、
――ごく少数よ」
「結局、一撃で潰せば同じだな」
レギが言う。
俺は原作の二人を思い出していた。
(『一撃でいくよ』、『本気でいくよ』)
(『必殺ですわ』、『本気でいきますわ』)
「………」
見事な脳筋だ。
その時。
楓がぽつりと呟いた。
「……脳筋……ども……」
ピシッ。
空気が凍った。
アリス。
エリザ。
シエル。
レギ。
四人の動きが止まる。
(言ってはいけないことを……)
訓練室の温度が、少し下がった気がした。
――――
――
旧都市。
ガイとイザベラが立つ。
都市内には、無数の魔獣。
魔力探査だけで嫌になる数だ。
「魔獣がウヨウヨいるな」
「数えるのも馬鹿らしいわねぇ」
二人が同時にデバイスを構える。
《ディスタンス・ジャッジメント》
《グラビティ・ヘカテー》
王国十二守護騎士。
その魔力が、
――解放される。
イザベラが静かに唱える。
「グラビティ・ホライゾン」
ズン――
世界が沈んだ。
疑似高重力空間。
旧都市全域が、重力場に包まれる。
魔獣たちの動きが止まった。
地面に縫い付けられる。
「さすがだな」
ガイが笑う。
膨大な魔力を身に纏い、銃を構える。
イザベラが横目で見る――。
「ゼロ・ディレイ・バスター」
銃口が光る。
――次の瞬間。
魔弾が放たれた。
一発。
放たれた魔弾が、空間で分裂する。
十発。
百発。
千発。
空を埋め尽くす魔弾。
拡散された弾幕、
その全てが、正確無比。
狙うのは、魔獣の体内コア。
ただ一点、――魔結晶のみ。
――全弾命中。
旧都市にいた魔獣たちが、一斉に崩れ落ちた。
イザベラが感嘆する。
「見た目は脳筋なのに……」
「繊細な魔力制御ぉ」
「少し気持ち悪いわぁ」
王国十二守護騎士第四位。
《超狙撃》ガイ。
魔力ランクSS。総合SS+。
総合値に“プラス”が付く理由。
それは、圧倒的技量。
その強さを裏付ける、絶対的な戦闘能力。
旧都市に巣くう魔獣は、完全に殲滅された。
ガイが前を見る。
「所詮、雑魚だ」
その目は、山脈を見据えていた。
「先へ進むぞ――」
彼の視線の先。
そこには――
旧都市の魔獣とは比較にならない、
圧倒的な魔力を放つ巨大な竜種が待っている。
作者( ゜Д゜):殲滅戦が始まりました
オコジョ:制限解除した十二守護騎士は……強いぜ!




