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第81話_辺境惑星

――辺境惑星近郊・宇宙空間。


漆黒の宙域。

音すら存在しない静寂の中――


その深部に、三隻の戦艦が静かに潜んでいた。


エリュシオン魔導王国戦艦――《アルカディア》


時空管理局戦艦――《ジ・ウラノス》


聖王教会戦艦――《エンピレオ》


三隻は特殊航行状態に入っている。


隠密潜水モード《サイレント・ダイブ》。


次元の狭間へ半ば沈み込み、

観測すら困難となる特殊航行形態。


合同作戦開始の時を待ちながら、

艦隊は静かに漂っていた。



――合同ブリーフィング・通信モニター


「かの有名な、

 聖痕の神罰執行隊――《スティグマ》の

 尊顔を拝せるとは。」


時空管理局代表。


ヴィンセント・クロムウェル提督が、

仰々しい口調で言った。

「――大変嬉しく思いますね」


通信モニター越し。


その言葉を受けた少女は、

――露骨に嫌そうな顔をした。


聖王教会代表。

ロザリア。


「……初めまして、――管理局提督」


冷たい声。

「別に仲良くする気はなくてよ」


「――作戦中に足を引っ張らないことね」


空気が少し張り詰める。


エリュシオン魔導王国からは、

三名が参加していた。


《重力の魔女》イザベラ。

《蒼氷》セレナ。

《超狙撃》ガイ。


ガイが、ロザリアを見てニヤリと笑う。


(あの嬢ちゃん……強いな)


戦闘狂である彼は、

味方相手でも無意識に力量を測る癖があった。


「……ちょっとガイ」

隣のセレナが小声で釘を刺す。


「顔に出てるわよ」

挿絵(By みてみん)


「おっと」

ガイは真面目な顔に戻した。


三組織による合同作戦。

時空管理局の若い男性職員が、説明を引き継ぐ。


「提督に代わりまして、

 今回の合同作戦について説明します」


モニターに惑星映像が映し出される。


「辺境惑星――惑星タタロス」


荒廃した惑星。

その表面には、黒い侵食が広がっていた。


「現在、惑星タタロスでは魔法生物が異常増殖しています」


「人類の生活圏は、ごく狭いエリアのみ」


映像が切り替わる。


――わずかに残された都市圏。


「作戦第一段階」


「敵性魔法生物の排除」


「生活圏の拡張」


「現地住民との交渉は、

 管理局側で実施します」


さらに次の資料が表示される。


「作戦第二段階」


空気が変わった。


「――“夜”を信仰する組織」


「その発見・排除」


「あるいは、実行されようとしている儀式の阻止」


ロザリアの目が細くなる。


「儀式の詳細は不明」


「また、『強欲の夜帳(ハプギーア・ナハト)』の

 暗躍についても、現時点では可能性の段階です」


――説明は続く。


「最低でも第一段階――」


「惑星を、人が住める状態へ戻すこと」


「これが――

 今回の最優先目標です」


作戦方針は共有された。


続いて――、

殲滅方法。


ヴィンセント提督が口を開く。


「戦力的には各組織が、

 個別行動でも問題ありませんが……」


提督はモニターを見渡した。


「一か所から円形に制圧範囲を広げていく」


「――この方式はどうでしょう?」


ロザリアが即答する。

「それで構いません」


聖王教会に異論はない。


魔女イザベラも頷いた。

「それで構わないわぁ」


王国側も同意。


――これで方針は決定した。


惑星タタロスは、すぐ目の前だ。


ガイはニヤリと笑った。


戦闘を想像するだけで、血が騒ぐ。


――やがて、通信が終了した。


モニターが消える。


「それじゃあ、

 私たちの細かい作戦を――」


イザベラが話し始める。


――だが。


「あー、細かいのは任せる」

ガイが立ち上がった。


「俺は――

 殲滅担当だ」


――久々の魔力制限解除。

暴れる以外の選択肢はない。


そう言い残し、部屋を後にする。


「まったく……」

セレナが呆れたように息を吐く。


後方では、二人が静かに見ていた。


《静寂》フィオナ。

《慈愛》エルゼ。


二人とも特に意見はない。


割りとよくある光景――。


自由な騎士団――。


それは、

各々の実力が絶対的だからこそ許される。



――――

――


――聖王教会戦艦エンピレオ


「あの提督……気持ち悪いわ……」

ロザリアが露骨に顔をしかめる。


部屋には四人の人物がいた。


聖痕の神罰執行隊(スティグマ)》。

聖王教会が誇る精鋭部隊――。


悪態を付く、ロザリア。


<部隊情報>

二つ名は、《灼熱の熾天》。

専用武器は、大剣型デバイス《レミエル》。

戦闘スタイルは、殲滅型魔導士。


「まあまあ、ローちゃん」

挿絵(By みてみん)


宥める女性。

ナタリー。


<部隊情報>

《粛清の能天》

双銃型デバイス《ウリエル》。

陸戦機動型魔導士。


「うむ」

大男のギルバート。


<部隊情報>

《金剛の力天》

大盾型デバイス《メタトロン》。

鉄壁守護型魔導士。


「ははっ」

苦笑する男。レオン。


<部隊情報>

《断罪の智天》

チャクラム型デバイス《ラファエル》。

飛行高速型魔導士。


今回の作戦。

聖王教会の主力は、この四人だ。


ナタリーが真面目な声で言う。

「今回の作戦……少しきな臭いわ」


全員の表情が引き締まった。


「聖女クラリス様からも、念押しされている」


――聖女からの言葉。


四人は、その重みを理解していた。


『何かあれば』

『魔導王国を頼りなさい』


『神剣のアルトリウスの下へ』


――だが。


今回の作戦メンバーに――


《神剣》アルトリウスの名はない。


「どういうことでしょう?」

ロザリアが首を傾げる。


「後から合流でしょうか?」

ナタリーが呟く。


「うむ」

ギルバートが頷く。


「分からんな」

レオンも眉をひそめた。


話し合いは終わる。


作戦開始まで、

あと少し。


――惑星タタロス。


魔法生物に侵食された、


壊滅世界。


人類の生活圏は極小。


だが――


今。


この星で――


新たな歴史が、

静かに動き始めようとしていた。

作者( ゜Д゜):四章の本編が始まります。

オコジョ:おいらにも部隊が欲しいぜぇ~

作者( ゜Д゜):スティグマは、揃いの戦闘服にこだわりを入れたよ。

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