第77話_異界の魔力
――アリス視点
「今度こそ――
本当に終わったよ。」
カートリッジを使い果たし、
限界を超えた魔力を解放して放った一撃。
《漆黒の月》を穿ち、ついに破壊した。
だが――、
その代償は大きかった。
体内の魔力は、ほぼ空。
もう限界だった。
飛行魔法すら維持できない。
「あ……っ……」
身体が傾く。
落ちる――。
そう思った、その瞬間。
「大丈夫か」
誰かに、そっと抱きかかえられた。
――お姫様だっこ。
驚いて見上げる。
そこにいたのは――
黒の魔導士《天輪》。
(祐司……!!)
一気に顔が熱くなる。
恥ずかしい。
でも――嬉しい。
自然と、笑顔になっていた。
「うん。私、やったよ」
そう返す。
《天輪》は静かに頷いた。
「――アリスはすごいな。
中学から魔法少女になって――」
「もう、ここまでの強さか――」
褒められた。
その言葉が、胸にじんわり染み込む。
嬉しい――。
けれど。
「??」
私は小さく首を傾げた。
「私が魔法少女になったのは、小学生の時だよ」
中学からじゃない。
そんな天才じゃないよ――。
少し照れながら訂正する。
えへへ、と笑いながら返した、その時だった。
一瞬だけ。
祐司が――。
いや、黒の魔導士《天輪》が。
まるで苦みを押し殺したような表情を見せた気がした。
その時の私は、知らなかった。
祐司の行動の意味を。
《天輪》の魔法が持つ代償を。
何も知らなかった――。
遥か彼方。
世界の壁の向こう側。
そこに存在する怪物――。
異界の怪物――“夜”。
異界の魔力は、
“願いを叶える”。
だが――
信じるなかれ。
『その代償は、願いをあざ笑う。』
遥か昔から。
信仰され、崇拝されてきた存在。
長い――。
長い夜が、明けようとしていた。
三人の魔法少女が台頭し始める時代。
新たな時代の幕開け。
物語は、
新たなステージへ進む。
――魔法世界シルヴァリス・エリュシオン
聖王教会・庭園。
美しく整えられた庭園の中。
聖女クラリスは、
白い椅子に腰掛け、優雅に紅茶を嗜んでいた。
その傍らに立つ男性が、静かに口を開く。
「我々は、貴方様の護衛でもあります。
お一人での行動は控えて下さい」
最近、時空管理局・日本支部へ
視察に向かった件について、やんわりと咎めていた。
クラリスは、ぷぅっと頬を膨らませる。
年頃の少女のような表情。
しかし護衛は、そんな顔をしても無駄です、
と言わんばかりに無言を貫いた。
やがて。
クラリスの表情が真剣なものへ変わる。
「私には――
魔法で未来を見通せなかった存在がいます」
空気が、僅かに張り詰めた。
「一つは……
《ワルプルギス》――我々が“夜”と呼ぶ異界の怪物」
そして。
クラリスは静かに続ける。
「もう一つが……
彼……黒の魔導士《天輪》の未来……」
護衛が目を細める。
「因果関係は分かりません」
クラリスは紅茶を置き、静かに語る。
「《天輪》については、
周囲の《星双》、そして《紅王権》を視ることで、未来が少し見えました」
「ですが――」
「彼自身の未来だけは、何も視えなかった」
穏やかな声。
だが、その言葉の重みは大きい。
「だからこそ――」
「私は、直接会って視る必要があったのですよ」
「………」
護衛は黙って聞いていた。
クラリスは空を見上げる。
遥か彼方を見つめるように。
「彼には、正しい未来を伝えました」
そして。
年頃の少女のような、柔らかな笑みを浮かべる。
「願わくば――」
『幸せな未来を掴み取って欲しい』
静かな祈りのようなその言葉が、
庭園の空気にそっと溶けていった。
作者( ゜Д゜):ワルプルギス!ついに名前が出ましたね。
オコジョ:色んな魔法少女の設定入れすぎだぞ!
作者( ゜Д゜):そりゃ言わない約束だぜ。魔女には気を付けろよ、オコジョ狩りされるぞ!
オコジョ:ひぃ、僕と契約ぅを~
作者( ゜Д゜):ちなみに、君を未来視で視ても、同じく見通せないぞ
オコジョ:え……まさか俺っちがラスボス!
作者( ゜Д゜):そんなわけあるかい!




