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第75話_永星銀砲(エターナル・アイリス)

――アリス視点


黒の魔導士《天輪》から託された

翠の魔力を体内で循環させる。


その瞬間、

魔力が共鳴し、爆発的に高まる。


胸の奥から、力が溢れて止まらない。


私はデバイスを掲げた。

「行くよ――クリスタルハート!!」


《I believe, Master.》


《Trust me, my Master.》


静かな機械音声が響く。


星銀の魔力が――

夜空へと真っ直ぐ立ち上った。


目の前には、超巨大魔獣。


街を滅茶苦茶にしている

元凶の一体。


――絶対に倒す。


その時――。

不意に脳裏に声が響いた気がした。


(――アリスの本気は、

 そんなもんじゃないだろ?)


……気のせいかな。


……でも、ひどく聞き慣れた声。


祐司の声に、似ていた。


私は微笑む。


「うん!

 ――これが、私の本気!!」


――ガシャン。


カートリッジの重い装填音。


――ガシャン。


――ガシャン。


三度の装填。

結晶化された圧縮魔力を、一気に解放する。


星銀の輝きが夜空を染める。

世界そのものが、星銀色に塗り潰されていく。


「奥義――」

オッドアイが鈍く輝いた。


「――《永星銀砲エターナル・アイリス》」


Sランクを超えた魔力は、

もはや通常の魔法ではない。


それは――。

現象を引き起こす力。


領域へ至る、一歩手前の世界。


――魔法が発動する。


遥か上空。

巨大魔法陣が展開された。


空から降り注ぐのは、

――銀の極光。


空間そのものを削り取り、存在を“無”へと還す。


星銀の一撃。

挿絵(By みてみん)


―――キィィィィィィィィィィンッ!!!


空間が悲鳴を上げるほどの高周波。


直後、真白の閃光が世界を染め上げる。


遅れて訪れたのは――

鼓膜を、脳を、大気を直接揺さぶるような、


世界そのものを砕く爆音。


――無。


超巨大魔獣は、跡形もなく消滅した。


黒い粒子となって、魔力が夜空へと四散する。


「……終わったよ」


街は《天輪》の魔法によって守られている。


超巨大魔獣は倒した。


けれど――

私は上空を見上げた。


遥か彼方。

月があるはずだった場所。


光を極限まで吸い込んだような、底知れない漆黒の球体。


《漆黒の月》。


あれだけが、なお空に浮かんでいる。


天輪の領域の、さらに外側。


(……あの距離を魔法で攻撃……)


(私に、できるかな……)


不安が胸をよぎった、その時だった。


ブゥゥゥン――


重低音とともに、巨大な影が現れる。


それは――

《隠密潜水モード(サイレント・ダイブ)》を解除した、


時空航行戦艦ジ・アース


艦長の声が響く。

『これより、主砲による《漆黒の月》の破壊を試みる』


『現場の魔導士は、直ちに離れるように――』


『繰り返す――』


時空航行戦艦ジ・アースによる砲撃が始まる。



――《ジ・アース》内部・ブリッジ


「主砲準備、

 オールグリーン。

 殲滅モードに移行」


静かなブリッジに、

ニコ・ラズパレードの声が響く。


コンソール上のホログラムが、

青から警告色の琥珀へと切り替わった。

挿絵(By みてみん)


「第一から第三システム稼働。

 エネルギー炉、高速回転開始。

 充填率、四十パーセント……五十パーセント……」


オペレーターたちの無機質な報告が重なる。


艦内には、心臓を直接揺さぶるような重低音が響き始めていた。


「全方位シールド、最大展開。

 発射時の余剰衝撃バックラッシュに備えよ!」


ミスティ艦長が鋭く指示を飛ばす。


全員の視線が、

メインスクリーンに映る《漆黒の月》へ注がれていた。


「主砲エネルギー、九十パーセント。

 カウントダウン体制に入ります」


ニコの声が引き締まる。


「十……九……八……」


ブリッジの照明が落とされる。


臨界点を迎えたエネルギー光だけが、乗組員たちの顔を照らした。


「……三……二……一……」


ミスティ艦長が号令を放つ。


「主砲、撃て――――ッ!!」


閃光。


高エネルギー砲撃が発射され、モニターが白く染まる。


「オコジョ先輩の仇っす」

ニコが小さく呟く。


「ニコ、オコジョは病院よ。死んでないわ」

間髪入れず、ミスティが突っ込む。


一瞬、ブリッジに安堵の空気が流れた。


だが――

晴れた視界の先。


メインモニターには、

《漆黒の月》が映っていた。


完全破壊には至っていない。


大破。


半壊状態。


しかし――

「消滅してない……」


「ッ……再生が早い!」


ミスティが叫ぶ。


ブリッジに再び冷たい緊張が走った。


モニターの向こうで、

《漆黒の月》の抉れた断面が、

生き物のように蠢きながら急速に再生していく。


「主砲の再充填には時間が掛かります」


オペレーターの無機質な報告。


主砲は連射できない。


――まずい。


誰もが最悪の結末を思い浮かべた。


その時――

声が響いた。


『――響け。

 果てなき星の歌!』


――詠唱。


――星銀の輝き。


『――巡れ。

 星銀の星々よ!』


周囲に、まばゆい星銀の粒子が渦巻く。


『《星環》に――集え!』


――詠唱は続く。


『軌道を巡る運行は、

 宿命の軌跡――』


『星辰の導きを以て、

 ――昏き夜を穿て!!』

挿絵(By みてみん)


「――星界穿スターライト・ブレイクピアース!!」


放たれた一撃。


星銀の奔流。


星の光。


それは――

空間ごと、貫いた。


流星のように空を裂き、《漆黒の月》を穿つ。


静寂。


次の瞬間。

《漆黒の月》は崩壊した。


黒い粒子となった魔力が夜空へと四散し、


幻想的な景色を映し出すのだった。

作者( ゜Д゜):魔法少女の戦闘は大体一撃。

オコジョ:そろそろ戦闘描写を厚くする時期じゃないか

作者( ゜Д゜):書く量が増えるじゃないか!今のペースでも終わりが見えないだが……

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