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第74話_四人の奥義

――アリス視点


「ひどい……」

空から見下ろした街は、完全な静寂に包まれていた。


熱がない。

音がない。

人の営みの気配さえ感じられない。


まるで都市そのものが死んでしまったかのようだった。


(都市のすべてが塗り潰される……)


(早く何とかしないと……)


前方には超巨大魔獣。

近づくにつれ、その異様さがはっきりと見えてくる。


巨大――という言葉では足りない。

もはや山。


漆黒の山が意志を持って歩いているような存在。


そして全身に浮かぶ無数の眼孔。


私が近づいた瞬間――。

ギョロリ。


その全てが一斉にこちらを見た。

思わず背筋が寒くなる。


魔獣はゆっくりと前進している。


音のない世界。

静かに死へ向かう世界。


そして、その脱出路を塞ぐように立ちはだかる超巨大魔獣。


(祐司……)


(みんな……)


仲間たちの顔が浮かぶ。

そんな時だった。


夜空に巨大な魔法陣が展開される。


都市全域を覆うほど巨大な円環。


「祐司っ……」


円環が世界を包む。

街そのものが《天輪》の領域へと飲み込まれていく。


これが――。

黒の魔導士《天輪》の力。


「すごい……」


世界を創り出している。

そう思えるほどの魔法だった。


そして――。

私の元へ翠の光が飛来する。


「祐司の魔力……」

そっと胸元へ抱く。

挿絵(By みてみん)


温かな魔力。

優しい魔力。


「温かい……」

身体の奥から力が溢れる。


星銀の魔力が共鳴する。


止まらない。

胸の奥から湧き上がる。


私はデバイスを掲げた。

「行くよ――クリスタルハート!!」


《I believe, Master.》

《Trust me, my Master.》

静かな機械音声。


同時に――。

四方の空へ巨大な魔力の柱が立ち上がる。


星銀。

紅雷。

蒼。

赤黒。


四色の光が夜空を染め上げた。


「「「「――奥義!!」」」」

世界に木霊する。



――レギ視点


翠の魔力によって魔力は回復していた。


(黒の魔導士《天輪》か……)


(良い仕事するじゃねぇか……)


目の前には超巨大魔獣。


巨大な影。

圧倒的な質量。


だが――。

怖くはない。


(楓が悲しむからな)


レギは巨大なハンマーを構えた。


「ぶっ潰すぞ!!」

《トールシュテンプファー》が唸りを上げる。


赤黒い魔力が噴き上がる。

空気が震えた。


「奥義――!!」

巨大なハンマーが輝く。


「《巨震崩壊デトネーション・ストライク》!!!!」


レギは一直線に突撃する。


ハンマーへ魔力を注ぐ。

巨大化――。


そして――。

「潰れろぉぉぉぉぉぉっ!!」


ドォォォォォォォォン!!

轟音。

凄まじい衝撃。


超巨大魔獣の身体が吹き飛ぶ。


山のような巨体。

その三分の一が文字通り削り取られた。


だが。


シュッ――。

黒い触手が無数に伸びる。


レギを捕らえようと襲い掛かる。


「チッ……!」

空中で回避。


そして。その時。

目にしてしまった。


削り取ったはずの部位。

それが再生している。


ゆっくりと。

確実に。


「回復だと……」

思わず動きが止まる。


その隙だった。


黒い触手が目前まで迫る。


(避けられない。)

そう思った瞬間――。


ひらり。

一枚のページが舞った。


――楓の断章。


レギの前に現れたページが障壁を展開する。


触手を防ぎ切った。


「――楓!」


ひらり。

ページが舞う。


まるで返事をするように。


レギは笑った。

(楓が守ってくれる)


――なら。

負けるわけにはいかない。


「やるぞ――!!」


赤黒い魔力をさらに練り上げる。


――触手が襲う。

だが。

ひらり。


断章が防ぐ。


ひらり。

断章が敵を封じる。


十分だ。

時間は稼げた。


――魔力は完成した。


「奥義――!!」


レギはさらに高く飛び上がった。

挿絵(By みてみん)


高く。


さらに高く。


そして――。

流星となって落下する。

挿絵(By みてみん)


最大まで魔力を込め

巨大化するデバイス――。


「光になれぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」


「《巨震崩壊デトネーション・ストライク》!!!!」

挿絵(By みてみん)


ドズウゥゥゥゥォォォォォォォン!!!


世界が揺れた。


もし《天輪》の保護がなければ。

数キロに及ぶ被害が発生していただろう。


それほどの衝撃。

超巨大魔獣は崩壊する。


黒い粒子となり。

完全に消滅した。


魔力が夜空へ四散した。



――シエル視点


「主なきシステムが――」


シエルは静かに剣を構える。


目の前の超巨大魔獣を見据えた。


「暴走した程度で、我々に歯向かうな」


応えを求めているわけではない。

――それは宣言。


「我は守護騎士シエル」

蒼の瞳が細められる。


「主――楓を守護する者」


脳裏に浮かぶ。


楓の笑顔。


楓の涙。


そして。

あの言葉。


「楓は言った――」

シエルの声が静かに響く。


「私を――家族だと」


ギロリ。

魔獣を睨む。


楓を悲しませる存在。

決して許さない。


蒼の魔力が解放される。

――世界が蒼く染まる。


魔獣も危険を察知したのだろう。

無数の触手を放つ。


だが。

ひらり。


楓の断章が現れる。

――触手を防ぐ。


シエルは動かない。

ただ魔力を練る。


ただ剣を構える。

それだけ――。


「奥義――」

世界が蒼に染まった。

空間そのものが支配される。


「《蒼刃一閃アズール・ブリッツ》」


閃光。

衝撃。


蒼い斬撃が放たれる。


一閃。


二閃。


三閃。


四閃。


五閃。


そして――。

数さえ超越した『無閃』。

挿絵(By みてみん)


全てが一瞬で終わった。


――静寂。


次の瞬間。

ッ――――――――ズバァァァァァァァァァァンッ!!!


世界そのものを両断するような斬撃音が炸裂した。


超巨大魔獣は細切れとなる。


無数の断片となり。

黒い粒子へ変わる。


――そして消滅した。


蒼い瞳が静かに閉じられる。

「我が剣に切れぬもの無し」



――エリザ視点


(祐司も黙っているなんて……)


アリスから聞いた。

黒の魔導士《天輪》の正体。


先ほど改めて見た時。

――確信した。


(絶対に祐司ですわ)


(間違いありませんわ!)


頬が緩む。

口元が上がる。


ニマニマが止まらない。


こんな状況なのに。

笑みが零れてしまう。


(お話したいことがいっぱいありますわ)


(いつも助けてくれたことも)


顔が熱い。


胸が熱い。


そんな時。

翠の魔力が飛んできた。


「祐司の魔力……ですわ」


大切に受け取る。


循環させる。

すると――。


紅雷の魔力が爆発的に高まった。

周囲の大気が帯電していく。


エリザの瞳が紅く輝く。

「すべてが――見えますわ」


超巨大魔獣の全てが見える。


構造が。

魔力の流れが。


「アストラペ!!」


《Your Majesty》


重い装填音。


――ガシャン。


――ガシャン。


――ガシャン。


三度の装填。


今ならいけると確信があった。

高みに届く魔力圧縮。


紅雷が夜空を染める。


世界が紅く染まる。


そして――。

《アストラペ》が変形する。


長大な砲身。

複雑な魔導機構。


長距離狙撃砲形態。

《ライフル・キャノン》。


それは――。

血族だけが扱える力。


紅き力。

その頂き――。


「奥義――」

世界が紅く染まった。


「《紅蓮王権スカーレット・レガリア・アストラペ》」


魔法が発動する。


だが。

砲身から砲撃は放たれない。


否――。


上空。

天そのものが輝いた。


巨大魔法陣。

そこから降り注ぐのは。


――紅き雷。

挿絵(By みてみん)


天罰のような一撃。

必中の一撃。


それは、超高火力魔導士の片鱗――。


紅き光が世界を包み込む。


バッ!!


バリバリバリバリバリィィィィィッ!!!


超巨大魔獣は跡形もなく消滅した。


影すら残さず。

黒い粒子となって崩れ去る。


魔力が夜空へ四散した。


四方の超巨大魔獣は――

残り一体。

作者( ゜Д゜):クライマックスに向けて奥義炸裂!

オコジョ:翠の魔力が万能すぎる件……。

作者( ゜Д゜):チート主人公ですからね!皆の力を加速させるのさ

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