第69話_緊急会議
――祐司家
俺は葛藤していた。
――楓のことだ。
「保護するべきか――」
しかし――
原作改変。
俺にとっては重い言葉だった。
「う~ん……」
腕を組みながら唸る。
どうするべきか。
答えはまだ出ない。
そんな時だった。
ふと、知っている魔力の波動を感じる。
「……オコジョ?」
影が揺れる。
――影移動魔法だ。
だが――。
繋がった影から現れたのは、オコジョではなかった。
「……ふむ」
姿を現したのは。
ニコ・ラズパレード。
そして。
ミスティ・オーレリア。
「どういう状況だ……」
二人とも時空管理局側での関係者。
今は、俺のこともある程度は知っている。
だが――。
現れた二人は、
明らかに様子がおかしかった。
「あ、祐司君……」
ニコがゆっくりと身を起こす。
一方でミスティは動けない。
かなり消耗しているようだった。
「……事件だな」
俺は小さく呟く。
楓のことで頭がいっぱいだったせいで、
周囲の状況を把握していなかった。
(うん。)
(すまん――。)
とありあえず、心の中でオコジョに合掌する。
(眠れ――オコジョ――。)
よく分かってないが、
どうやら盛大に何かをやらかしたのだろう。
――――
――
夜。
崩れた瓦礫は撤去され。
日本支部の被害状況がおおよそ把握された頃。
黒の魔導士――《天輪》。
俺は、局長室のソファに腰掛けていた。
お茶を運んできたニコが、ごくりと喉を鳴らす。
(祐司として接している時は普通なのに……)
(《天輪》として会うと緊張するらしい。)
(――何故!?)
そんなことを考える。
――集まった中心人物は四人。
魔法少女アリス。
魔法少女エリザ。
ミスティ・オーレリア。
そして――俺。
重い空気の中。
最初に口を開いたのはミスティだった。
「被害は……」
まだ完全には回復していないのだろう。
声に力がない。
ニコが報告する。
「当時支部にいた戦闘員は、ほぼ全員が魔力を吸収されてるっす」
「完全回復までは、数週間から数ヶ月ってところっすね」
――重い被害だった。
限界近くまで魔力を奪われたのだろう。
アリスが俯く。
「私たちが現場に着いた時には、もういなかったよ……」
悔しそうな表情。
何もできなかったことが心残りなのだろう。
エリザも静かに目を閉じる。
そして。
「黒の御方」
エリザは、こちらへ視線を向けた。
「どうします?」
静かな問い。
俺は少しだけ考えた後、口を開く。
「まず確認だ」
全員の視線が集まる。
「守護騎士の目的を知っているか?」
沈黙。
誰も答えない。
魔力を集めていることは分かっている。
――だが。
その理由までは知らない。
(まあ、今知っても後で知っても結果は同じか。)
そう考えた俺は説明を始めた。
「古代魔導書――《宵闇の書》について」
静かに語る――。
「――防衛・執行システム」
「――破壊のための装置」
「――守護騎士の願い」
「――そして、魔法少女カエデの状態」
必要な部分だけを簡潔に。
だが十分な情報量だった。
話が終わる頃には。
部屋の空気がさらに重くなっていた。
「なぜ、そんな情報を……」
ミスティが唸る。
「カエデちゃん……」
アリスの表情が曇る。
苦しむ楓の姿を想像したのだろう。
エリザも静かに俯いた。
「アリス……」
親友を案じる声だった。
「どうするか……か」
俺が呟く。
すると。
ミスティが即座に答えた。
「書の完成は止めるべきよ」
当然の結論だった。
破壊を撒き散らすシステム。
その起動を望む者などいない。
だが――。
中途半端に止めるだけでは意味がない。
楓の状況は改善しない。
魔力暴走は既に始まっている。
(俺が進む道は――)
考える。
俺は原作を知っている。
そして。
原作を愛している。
だからこそ。
物語を変えることへの抵抗があった。
だが。
それでも。
苦しんでいる少女がいる。
助けを求めているわけではない。
それでも。
苦しみから解放してあげたい。
(……そうだよな)
静かに目を閉じる。
そして開いた。
答えは決まった。
(俺がやることは変わらない)
ゆっくりと立ち上がる。
全員の視線が集まった。
「ミスティ・オーレリア」
静かに告げる。
「悪いが、ここからは一人で行動する」
「なっ……」
ミスティが絶句する。
アリスも。エリザも。
息を呑んだ。
俺は構わず左手を掲げた。
「……テトラ」
呼びかける。
空間に魔力が満ちる。
「力を解放するぞ」
『《Incorrigible, Master.》』
低く響く機械音声。
翠の魔力が身体を巡った。
「待ちなさい……!」
ミスティが声を荒げる。
だが。
俺は止まらない。
前世から抱き続けた想い。
それだけは。
決して変わらない。
譲れない一線だった。
だから――。
俺は進む。
物語は。
さらに加速していく。
オコジョ:祐司の決断は!、そして俺っちの復活は!
作者( ゜Д゜):いやいや、後半は誰も気にしてない!




