第58話_紅王権
――アリス視点
銀。紅。赤黒。蒼。
四色の光が激突し、周囲を震わせる
「まだですわぁぁぁっ!!」
エリザちゃんの紅雷がさらに出力を増した。
空間そのものが軋む。
魔力が重い。
――強い。
――本当に強い。
――でも、このままじゃ。
勝てない。
私が一瞬だけ迷った、その時。
「アリス……この後は頼みますわ」
「っ……!」
エリザちゃんの声。
彼女は笑っていた。
「わたくし……きっと倒れてしまいますから」
「エリザちゃん!!」
叫ぶ。
止めようとした。
でも、もう遅かった。
「アストラペ!!」
――ガシャン。
重い装填音。
さらに。
――ガシャン。
二度目。
連続カートリッジ装填。
限界を超えた魔力圧縮。
危険領域。
エリザちゃんの魔力が跳ね上がる。
紅雷が夜空を染めた。
「っ……!!」
周囲の大気が帯電していく。
《雷光王冠》が、
周囲の大気から電気を吸い上げる。
エリザの瞳に魔力が集まる。
そして――。
デバイス《アストラペ》が変形する。
複雑な魔導機構。
長大な砲身。
長距離狙撃砲形態
《ライフル・キャノン》。
それは王者の証明――
「すべてが――見えますわ」
紅く輝く瞳。
――それは血族だけが使える力。
――その一端。
「《レガリア・アストラペ》!!」
構え、
撃ち放たれる。
――それは王権の名を冠する砲撃。
紅雷が空間を走る。紅雷の奔流。
巨大な砲撃が空間ごと守護騎士たちを飲み込んだ。
――轟音。
視界が真紅に染まる。
推定魔力ランク――S+。
二重カートリッジによる限界超過砲撃。
守護騎士の赤黒と蒼の魔力を、
真正面から押し返していく。
「っ……!!」
レギが踏み込む。
シエルが剣を構える。
だが。
押される。
紅雷が、
戦場そのものを塗り潰していった。
――
――――
俺は思わず笑みを零した。
「……ははっ」
エリザ。
原作より遥かに速い成長。
カートリッジによる二段階解放の。
《レガリア・アストラペ》。
紅王権へ至る少女の輝き。
「紅蓮の解放も近いか……。」
心が震える。
魔法少女オタクとして、
この光景はたまらない。
本来より強く、
本来より早く進化していくヒロインたち。
だが――。
「ここまでだな」
観戦モードの終了。
これ以上は危険だ。
隣では、カエデも静かに立ち上がっていた。
――
――――
紅雷が弾け飛ぶ。
四散する魔力。
そして。
その場に残っていたのは――。
倒れたエリザ。
膝をつくアリス。
満身創痍のレギとシエル。
全員、限界寸前。
デバイスを支えに、
辛うじて立っている状態だった。
その中で。
シエルだけが、
気力で剣を構える。
「……まだ……!」
蒼い斬撃。
放たれる瞬間――。
俺は前へ出た。
ガシッ。
魔力を纏った手で、
その剣を受け止める。
「さすがだな」
「っ!!」
シエルの目が見開かれる。
「お前は――」
その時。
ふわり、と。
紫黒の魔力が舞った。
カエデが降り立つ。
「主!!」
レギが反応する。
カエデは二人を見て、
静かに言った。
「レギ、シエル……帰るよ」
優しい声。
だけど、
それは決定事項だった。
戦いは終わり。
双方、痛み分け。
これ以上はダメ。
そんな意思が、
その言葉には込められていた。
カエデは、
アリスとエリザを一瞥する。
そして。
小さく。
「……またね」
そう言い残し、
守護騎士たちと共に夜空へ消えていった。
魔法少女カエデ。
そして守護騎士。
その初めての邂逅は――。
勝利も敗北もない。
苦い痛み分けで終わった。
――
――――
――時空管理局、日本支部・局長室
「――あなたね。
もう少し被害を抑えて欲しかったのだけど」
ミスティ・オーレリア提督が、
感情を押し殺した声で言う。
その視線の先。
ソファに座っているのは――。
黒の魔導士《天輪》。
俺だ。
お茶を運んできたニコ・ラズパレードが、
ごくりと喉を鳴らしている。
そして。
隣では、オコジョが――。
「……」
魂が抜けた顔で固まっていた。
机の上には、
大量の被害報告書。
道路損壊。
ビル外壁破損。
街灯全壊。
魔法による修復費用。
そして。
ちらりと見えた請求書の金額。
「…………」
ゼロの数がおかしい。
俺はそっと視線を逸らした。
すると。
ミスティ艦長が、
にこりと笑う。
笑顔だった。
もの凄く笑顔だった。
「今回、“協力者”扱いにしてあげるから」
優しい声。
「修復作業、強制参加ね?」
「…………。」
「逃げたら始末書百枚よ。」
「くっ!!
オコジョを使う……。」
俺は、隣で魂が抜けてるオコジョを犠牲する。
「……はっ!、おい!」
復活したオコジョ。
オコジョの叫びが、
夜の管理局に響き渡った――。
作者( ゜Д゜):オチがついたね。
オコジョ:おいぃぃ~!




