第54話_守護騎士とは
――夜。
春とはいえ、夜風はまだ少し冷たい。
街灯に照らされた市街地の上空を、二つの影が高速で駆け抜けていた。
銀色の軌跡。
紅い雷光。
アリスとエリザだ。
「最近、噂になってますわね」
夜空を飛行しながら、エリザが言う。
「“夜に現れる騎士風の魔導士”……だっけ」
アリスは周囲を警戒しながら答える。
「えぇ。管理局でも話題になってましたわ」
夜の街。
各地で魔法生物が異常発生している。
そして、その現場では必ず“騎士”が目撃されていた。
謎の魔導士。
騎士のような装備。
空を飛び回り、魔法生物を倒して消える存在。
管理局でも正体不明。
だが――。
「いた」
アリスが視線を向ける。
道路の上。
そこには二人の少女がいた。
一人は、小柄な少女。
短いピンク髪。
大きなハンマー型デバイスを肩へ担いでいる。
もう一人は、長身の女性。
薄い青色のロングヘアを高い位置でポニーテールにまとめ、
細身の長剣型デバイスを携えていた。
その周囲には、倒された魔法生物の残骸。
そして――。
「……あれ」
エリザが目を細める。
少女たちは、砕けた魔法生物から浮かぶ魔力を、
紙の断片へ吸収させていた。
黒いページ。
まるで生きているように魔力を喰らっていく。
「何をしていますの……?」
エリザが警戒を強める。
すると。
小柄な少女がこちらを見上げた。
「見つかったぞ」
淡々とした声。
その隣で、青髪の女性も静かに長剣を構える。
「……誰?」
アリスが真っ直ぐ問いかける。
一瞬の沈黙。
そして。
「守護騎士、レギ」
ピンク髪の少女が名乗る。
「守護騎士、シエル」
長身の女性が続いた。
静かな夜空。
その中で、二人は確かな覚悟を宿した瞳でこちらを見る。
「我らは主のために戦う」
「主の願いを叶えるために」
その瞬間。
空気が変わった。
魔力。
圧力。
戦闘の気配。
「……来ますわ!」
エリザが叫ぶ。
次の瞬間。
レギが爆発的加速で突っ込んできた。
「っ――!」
アリスは咄嗟にシールドを展開する。
轟音。
ハンマーと正面衝突した。
重い。
異常なまでの破壊力。
小柄な体格とは思えない質量の一撃。
「はぁっ!!」
レギがハンマーを振り抜く。
衝撃波がビル壁面を砕いた。
「近接特化……!」
アリスは空中へ飛び退く。
一方。
エリザの前では、シエルが長剣を抜き放っていた。
蒼い斬撃。
鋭く、速い。
「――っ!」
エリザはアストラぺの射撃で牽制しながら後退する。
「《ミドルレンジ・アサルト》!」
紅雷の高速射撃。
だが。
シエルは最小限の動きで全てを斬り払った。
「無駄だ」
そのまま一気に間合いを詰める。
剣閃。
火花。
空中で激突する魔力。
戦いは一瞬で市街地上空全域へ拡大していった。
――
――――
少し離れたビル屋上。
「……うわぁ」
俺――祐司は、その光景を眺めていた。
黒の魔導士《天輪》。
だが今は、ただの観戦モードである。
本来の原作知識から考えれば――。
(アリスとエリザの圧勝だな)
そう思っていた。
二年半。
管理局での訓練。
カートリッジシステム。
今の二人は、原作時点より遥かに強い。
だから…
原作初期状態の守護騎士なら、
普通に押し切れると思っていた。
……だが。
「いや、待て」
俺は目を細める。
「強いぞ……」
明らかにおかしい。
原作知識では、
守護騎士たちは本来、魔力不足の状態だったはずだ。
主の覚醒前。
不完全な状態。
だから魔力回収を行っているはず……。
なのに――。
(魔力が満ちてる)
どう見ても。
完全な状態。
全力戦闘。
出力制限が存在していない。
レギの破壊力。
シエルの剣速。
どちらも、原作序盤を超えている。
そして何より。
今のアリスとエリザ相手に、互角。
明らかに異常だった。
戦闘規模がさらに広がる。
魔力衝撃で窓ガラスが震える。
夜空に銀光と紅雷が交差する。
その時だった。
(不味いな……。)
紙……。
魔導書の断片が…
ひらり、と。
夜風に乗って、舞った。
古びた魔導書の断片。
それはまるで、
意思を持つように空中を漂っていた。
作者( ゜Д゜):これは…魔力ランクAクラスは超えてますね。
オコジョ:俺っちのBランクでは太刀打ちできないぞ




