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第50話_翠瞳の黙示録

――春。


桜が舞うその日、有栖川時寧たちは高等学校へ入学する。

少女たちが、それぞれの未来を決めてから二年半。


高校生――

少しだけ大人になったが

まだ子供の範囲。


だが――

世界は、彼女たちを待ってはくれない。


地球の裏側で。

そして、遥か彼方の魔法世界では。


静かに、不穏な影が蠢き始めていた。



――魔法世界シルヴァリス・エリュシオン


魔導王城、王女私室。


「レーゼ様、お時間です」

低く落ち着いた声が、静かな部屋に響く。


整えられた執事服。

光を反射する片眼鏡。

一切の隙を感じさせない直立姿勢。


魔導王国筆頭執事――ベルガは、椅子に腰掛けた少女へ恭しく頭を下げた。


「ベルガか……。うむ、分かったのじゃ」

レーゼ王女は小さく頷き、机の上へ視線を落とす。


そこに置かれていたのは、一枚の写真。

挿絵(By みてみん)


数か月前。

冬の日本へ遊びに行った際に撮影したものだった。


雪の降る街角で、アリスやエリザと並んで笑っている。

何気ない、けれど大切な思い出。


二年半前の出会いをきっかけに、レーゼは時間を作っては地球を訪れていた。

互いの世界を行き来しながら、友情を深めていったのである。


「アリス様方とのお写真ですか」

ベルガは穏やかな声で言う。


「……今の情勢を鑑みれば、ご助力を願うべきかと」


だが、レーゼは静かに首を横へ振った。


「いや……友達は巻き込めぬ」


その瞳には、王族としての覚悟が宿っていた。


写真をそっと伏せ、レーゼは立ち上がる。


「行くぞ。会議室へ」



――王城中央会議室。


そこには、王国中枢の面々が集結していた。


王。

そして――十二守護騎士。


第一位から第十二位まで、全員が一堂に会している。


それはすなわち、王国最高戦力の総動員を意味していた。


 第1位――《神剣》アルトリウス

 第2位――《重力の魔女》イザベラ

 第3位――《蒼氷》セレナ

 第4位――《超狙撃》ガイ

 第5位――《眠り姫》ネネ

 第6位――《烈火》グレン

 第7位――《静寂》フィオナ

 第8位――《聖騎士》ユーリ

 第9位――《鳴神》リン

 第10位――《迅速》カイ

 第11位――《賢者》テラス

 第12位――《慈愛》エルゼ


レーゼが着いた瞬間、王が重々しく口を開く。


「――報告を」

直後、円卓の上に立体魔導地図が浮かび上がった。


「“星外任務”にて収集した情報です。現在の戦況をプロットします」

術者の声と共に、無数の光点が辺境惑星の大陸へ広がっていく。


各地で観測される異常魔力反応。

魔法生物の侵攻痕。

暗躍する組織の影。


裏側で蠢く“夜”の気配……。

世界は、既に新たな局面へ踏み込み始めていた。

挿絵(By みてみん)



――聖王教会。


静寂に包まれた大聖堂。

ステンドグラスから差し込む光が、幻想的な色彩を床へ落としていた。


その中央で、一人の少女が祈りを捧げている。


翠瞳の聖女――クラリス。


長い祈りだったのだろう。

周囲には濃密な翠色の魔力が滲み、空気そのものを震わせていた。


やがて。

ゆっくりと、聖女の瞳が開かれる。


翠の輝き。

鈍く、深く、底知れぬ光。


未来視の魔法――《聖女の預言》が始まる。

挿絵(By みてみん)


それは後に、《翠瞳の黙示録》と呼ばれる言葉だった。


『日輪の背後に黒き衣が隠れ、静かなる大地に届かぬ声が染み渡る。

 水面に映らぬ月が満ちる時、禁じられた色の露が、四隅より湧き出でん』


『一つが千となり、千が万の羽音へと変わる。

 主なき殻が土より這い出し、空を覆う嘆きの雲を紡がん』


『光を冠する十二の楔が、押し寄せる闇の潮流に立ち塞がらん。

 されど鋼の祈りは砕け、黄金の剣には亀裂が奔る』


『人の集う庭に、巨きな呪いの冠が描かれん。

 数多の灯火は消え、都を巡る脈動は、異界を招く門の鍵へと変わる』


『大地は砕け、天は墜ち、惑星そのものが巨大なる骸へと変じよう。

 翠瞳の奥に映るは、終焉を抱く黒き胎児の目覚めなり』


翠瞳に写った言葉を詠み終わる。

聖堂を満たしていた翠の魔力は、霧のようにゆっくりと霧散していった。


「やはり……」

クラリスは苦しげに目を伏せる。


「未来が……はっきり見えませんね。」

聖女は静かに呟いた。


未来は断片的に視えている。

だが、映像の肝心な部分だけが黒く塗り潰されている。

見えた言葉だけは、何とか読み解いた。


まるで、“何者か”が未来そのものを覆い隠しているかのように。


クラリスは胸元を押さえ、小さく息を吐いた。

その翠瞳の奥には、確かに“終焉”の影が映っていた。

作者( ゜Д゜):三章始まります。

オコジョ:引き続き、俺っちの活躍見てくれよな

作者( ゜Д゜):第77話までの予定だが…オコジョの活躍は……

オコジョ:今からでも書き換えてくれぇ~


誤記修正(5/22)

リーゼ王女× → レーゼ王女◯

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