第49.5話_記録Ⅱ
――とある未来の話。
静寂に包まれた空間。
無機質な光の中で、ひとりの青年が目を細めた。
「……テトラ。
……次の話をしてくれ」
一拍の間。
機械ともつかない声が、静かに応答する。
「《Incorrigible, Master.》」
――記録領域、展開。
視界が反転する。
無数の光の粒子が、世界を形作り直していく。
それは――
“あの夜”へと至るまでの、すべての記録。
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■観測対象:祐司
最初に映し出されるのは、
“未来を知る少年”の、その先。
内藤祐司。
物語を知る転生者。
観測者であり続けようとした存在。
だが、
その立場は静かに崩れ始める。
魔法世界シルヴァリス・エリュシオン。
星属性。
王国。
管理局。
交わるはずのなかった未来。
彼はそこへ踏み込んだ。
デバイス《テトラ》。
循環する魔力は、
もはや加速の領域を超えている。
《永久循環》(パーペチュアル・ループ)。
蓄積し、
増幅し、
終わりなく巡り続ける魔力。
《多重加速》(マルチ・アクセル)。
思考を。
身体を。
時間そのものを加速させる異常。
そして。
彼は見せ始める。
“閉じた世界”の片鱗を。
王国守護騎士を単独で制圧し、
管理局上層部にすら、
“戦艦級”と認識される存在。
だが。
それでも彼は、
自分を主人公とは呼ばない。
少女たちの未来を、
選ぶべきなのは自分ではない。
だから彼は、
問いかけるだけだ。
「……どんな選択でも、
俺は応援するだけだ」
そのはずだった。
だが、
原作は既にズレ始めている。
本来、存在しない魔結晶。
失われた記憶。
そして――“■■■■■■”の存在。
観測者は、
もう観測だけでは終われない。
■観測対象:アリス
星は、
ついに覚醒へ至る。
有栖川時寧。
銀の髪。
蒼と金の瞳。
誰かを守りたいと願った、
優しい少女。
その願いは変わらない。
だが、
彼女は知る。
世界の広さを。
自分の力の意味を。
そして、
未来を選ぶということを。
星光を纏う槍は、
共鳴によって新たな姿へ進化する。
“星属性”。
それは極めて稀少…。、
“星々の輝き”の資質。
レーゼとの共鳴。
祐司との繋がり。
積み重なった想いは、
やがて彼女を《星双》へ至らせる。
背に広がる星空のマント。
渦巻く星銀の魔力。
そして放たれる一撃。
――星界穿
《スターライト・ブレイクピアース》。
それは、
世界を貫く星の槍。
王城防壁すら突破する、
覚醒の証。
やがて彼女は、
未来を選ぶ。
時空管理局。
魔法少女として生きる道。
その先に待つものを、
まだ彼女は知らない。
■観測対象:エリザ
雷光は、
静かに寄り添う。
小早川エリザ。
紅雷を操る少女は、
中心には立たなかった。
だが。
彼女は確かに、
支えていた。
覚醒する星を。
揺れる仲間を。
《アストラペ》。
砲撃と狙撃を司る紅雷。
必中の雷撃は、
依然として強力な牙を持つ。
“力”だけではない。
アリスとは違う形で。
彼女は近づいていく。
紅王権へ至る少女は、
まだその先を残している。
紅雷はまだ、
真の輝きを見せていない。
■観測対象:レーゼ
閉じ込められていた星。
レーゼ・エリュシオン。
王国に縛られた王女。
自由を知らず、
空を見ることすら許されなかった少女。
だが、
彼女は出会ってしまう。
もう一人の“星”に。
魔力共鳴。
それは単なる魔力反応ではない。
魂の波長。
孤独だった星は、
もう独りではいられなくなる。
そして、
彼女の存在こそが、
アリス覚醒の鍵となった。
星は、
星を呼ぶ。
それは偶然だったのか。
■観測対象:エリュシオン
三千年続く、
魔導始祖国家。
エリュシオン王国。
そこは、
魔法文明の頂点。
王。
守護騎士。
星属性。
古代魔導。
すべてが、
地球とは異なる次元にある。
だが。
その王国すら、
理解していなかった。
黒の魔導士《天輪》を。
そして、
十二守護騎士を使い、調査している。
“夜”の存在を。
それは、
遥か昔より続く異質。
原初魔法。
異界の魔力。
世界の裏側。
■観測対象:管理局
監視する巨大組織。
時空管理局。
そして、動き始める。
異常は、
既に看過できない段階へ至っていた。
時空航行戦艦。
艦長、
ミスティ・オーレリア。
主任オペレーター、
ニコ・ラズパレード。
彼女らは地球へ降り立つ。
目的は、
勧誘、導くこと。
星属性の勧誘。
そして天輪との接触。
管理局はまだ知らない。
天輪…その少年こそが、
未来そのものを歪め始めていることを。
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光が消える。
静寂が戻る。
「……以上です、マスター」
テトラの声が、淡々と響いた。
青年は、何も言わない。
物語は、まだ終わっていない。
作者( ゜Д゜):記録Ⅱ…?
オコジョ:アワアワアワ……




