第39話_シナリオ通り?行こうか魔法世界
「……ありがとう……あの……」
疲れきった声で、アリスが礼を口にする。
「……黒の御方。本当にありがとうございますですわ」
エリザも前のめりに頭を下げた。
「……」
気まずい。
(祐司だとバレるわけにはいかない……)
正体を隠す以上、会話は最小限に抑えるしかない。
(オコジョよ……早く来い……)
内心で念じた、その時――
「お~い」
木々の間をすり抜けて、小さな影が飛び込んできた。
「あ、オコジョさん!」
「確か、時空管理局員の……」
エリザもすぐに気づく。
「管理局のエリート観察官、オコジョ様が助けに来たぜ!」
ドヤ顔で胸を張るオコジョ。
――その瞬間。
影の中から、ひょこりと顔が出る。
「んお?
お主、オコジョではないか!」
「……ひょぁ、レーゼ王女!?」
オコジョの目が、まん丸に見開かれる。
「まさか……」
本国からの指令。
エリュシオン王国の筆頭執事、及び守護騎士二名――計三名の無断転送。
そして、この場にいる王女。
点と点が、線で繋がる。
「終わった……俺の休暇……」
力なく項垂れるオコジョ。
(……状況は揃ったな)
俺は静かに状況を整理する。
管理局の協力は必要だ。
そして――
「……王女は、エリュシオンに帰さないとだな」
その一言で、空気が止まる。
レーゼ。
アリス。
エリザ。
三人の視線が揃う。
――彼女達は思い出す。
『――あそこは窮屈なのじゃ』
『アリス、エリザ……お願いなのじゃ。一日でいいのじゃ……』
『――助けてくれなのじゃ』
友達の頼み。
約束した言葉。
「あ……」
三人が、言葉を詰まらせる。
その時。
「大丈夫だ」
そっとレーゼの頭に手を置いた。
「――遊びに行きたいんだろ?」
「……そうなのじゃ」
小さく頷く。
「しきたりばかりで……退屈なのじゃ」
(原作では――)
連れ戻された王女の願いを叶えるために、
アリスとエリザはエリュシオン王国へ乗り込み、直談判をする。
(この流れは、変えない)
(むしろ――俺がやる)
「行こうか」
一歩、前に出る。
「――魔法世界シルヴァリス・エリュシオン」
空気が、わずかに震えた。
オコジョがこちらを見る。
(ここで転送ゲートか!)
「……仕方ない。一肌脱ぐぜ」
通信デバイスを起動。
「こちらオコジョ、艦長……
実はカクカクシカジカで……」
事情を説明し、魔導転送ゲートの使用を申請する。
管理外世界での任務において、
管理局員は携帯型の転送ゲートを所持している。
だが――
本来、緊急時以外の使用は認められない。
理由は単純。
一回で、オコジョの一年分の給料が飛ぶからだ。
「………」
わずかな沈黙の後。
「認められないわ」
無情な一言。
「……」
空気が凍る。
「自腹で払うなら良いわよ」
追撃。
「終わった……」
崩れ落ちるオコジョ。
「俺の給料一年分が……」
(……ここは原作通りか)
わずかに苦笑する。
(原作は、休暇中のオコジョの呼び出し+自腹のコンボだ。)
(流れは変わっているのに、こういう所は変わらないんだな。)
俺は小さく息を吐いた。
――だが。
物語は、ここからだ。
作者( ゜Д゜):オコジョ待望の活躍だぞ、2枚も挿絵入れたぞ。
オコジョ:不遇を改善しろ(断固ストライキ)




