第37話_絶望からは逃げれない
――森の中。
最初に動いたのは、ガイだった。
長銃型の魔導デバイスを肩に担ぎ、口元を歪める。
「まずは技量を見ようか――拡散しろ」
引き金が引かれる。
放たれたのは、一発。
だが、その弾丸は空中で裂けるように分裂し、
次の瞬間、幾何的に増殖する。
――無数。
点ではなく、面。
空間そのものを覆い尽くす弾幕となって、
一斉に押し寄せた。
「……っ!」
「エリザちゃん!」
アリスが即座に前へ出る。
「《ディバイン・シールド》!」
展開された防御障壁が、迫り来る弾幕を受け止める。
激突音が連続し、視界が揺れる。
「くっ……行動が取れない……!」
圧倒的な面制圧。
完全に動きを封じられる。
「アリス! 反撃は私が――」
エリザが一歩踏み出す。
「シュート!」
射撃銃から放たれる高密度魔弾。
だが――
「私が切ります」
リンが静かに前へ出る。
一閃。
抜き放たれた刀剣が、エリザの魔弾を容易く斬り裂いた。
霧散する魔力。
「……っ」
状況は動いた。
だが――
ベルガは動かない。
ただ、見ている。
「魔力は良いが……技量は、まだ子供だな」
ガイが笑う。
「俺は銃のお嬢ちゃんを相手する」
長銃をエリザへ向ける。
「リン、オッドアイの子は任せた」
「了解しました」
短い応答。
戦線が分断される。
「まずいよ、エリザちゃん……!」
「えぇ……相手の方が一枚上ですわ……」
重い認識。
「アリス……エリザ……」
レーゼの声が震える。
「悪いが連携はさせないぞ」
ガイが動く。
弾幕を維持したまま、距離を詰める。
「この……っ!」
エリザも応戦するが――
精度も、判断も、全てが上回られている。
魔弾が地面に叩きつけられ、土煙が上がる。
視界が遮られた、その瞬間。
「どこに……!」
エリザが視線を巡らせる。
「嬢ちゃん、近接はどうかな?」
背後。
「――っ!」
振り向くより早く、長銃が突きつけられる。
咄嗟に防御魔法を展開。
だが――
「甘い」
横合いから、蹴撃。
「きゃあっ……!」
エリザの体が吹き飛ぶ。
地面を転がる。
「デバイスだけが全てじゃない」
圧倒的な“経験差”。
――もう一方。
リンが静かに構える。
刀剣を上段に。
空気が、止まる。
「……一撃で終わらせる」
静かな宣言。
アリスは歯を食いしばる。
そして――
加速。
一直線に距離を詰める。
「星界穿――《スターライト・ブレイクピアース》!」
銀の軌跡。
交差する一瞬。
リンが動く。
「一刀流――鳴神」
雷鳴。
剣身に宿る魔力が唸る。
衝突。
「きゃあっ……!」
弾かれる。
アリスの身体が宙を舞い、地面へと叩きつけられる。
転がり――
エリザの傍へ。
「……あ、あう……」
「……アリス……しっかり……」
互いに満身創痍。
呼吸も乱れている。
前方には――
ガイ。
リン。
そして、その後ろ。
微動だにしないベルガ。
――絶望的な布陣。
ベルガが、静かに口を開く。
「……レーゼ様」
その声は、冷たい。
「お戻りにならないのであれば……」
一拍。
「この星で出会った、お二人は、将来、我々の脅威となり得ます」
言葉が、突き刺さる。
「魔力制限下とはいえ……我々に匹敵する魔力を持っている」
淡々とした評価。
「ゆえに――私は“非常な決断”を下さねばなりません」
選択が、突きつけられる。
「アリス……エリザ……わらわは……」
レーゼの肩が震える。
うつむく。
だが――
「「大丈夫だよ(ですわ)」」
二人は、笑った。
ボロボロのまま。
それでも。
だが――
状況は、変わらない。
「……仕方ありませんね」
ベルガが腰の剣に手をかける。
抜き放たれる。
黒い刀身。
「魔導デバイス――シュヴァルツフォーゲル」
空気が、歪む。
「恨まないでください」
低い声。
そして――
「奥義――影踏みの鴉」
黒い光が広がる。
影が、伸びる。
地面を這い、空間を侵食する。
一瞬。
視界が歪む。
――消えた。
「……っ!?」
次の瞬間。
死角。
背後。
横。
どこからともなく――
斬撃。
「――ぁ」
切り裂かれる。
アリスとエリザの身体が、同時に崩れ落ちた。
力なく。
地面へ。
「……ぁぁあ……」
声にならない声。
森が、静まる。
――絶望。
音が、消える。
時間が、止まる。
……その中――。
カチリ、と。
まるで。
世界の歯車が――噛み合うような音が、響いた。
オコジョ:ぁぁあああ…俺っちが居ないばかりに…。
作者( ゜Д゜):次回主人公……登場です!




