第24話_神殺しの舞台
「……計算が狂ったなら、
盤面ごと書き換えるまでだ」
小早川教授が放つ、汚濁した魔力の奔流。
それを受け流しもせず、俺は自分のデバイス――
《テトラ》へと声をかけた。
「……テトラ。力を解放するぞ」
「《Incorrigible, Master.》」
応答と同時に、
デバイスが深淵のような赤黒い輝きを放ち始める。
「第一解放――
【始源の環】」
カチリ、と。
世界の歯車が噛み合うような音が響いた。
天輪円環の特性――
『永久循環』が起動する。
放出された魔力は霧散せず、
円環状の軌道を描いて俺の元へと還る。
一巡するたび、
その密度は倍加していった。
体内を満たす魔力の奔流。
視界が反転し、
黒かった瞳が鮮やかな翠へと染まる。
空気が歪んだ。
「第二解放――
【多重加速】」
思考速度。
魔力循環。
物理法則。
そのすべてが、数千倍へと引き上げられる。
周囲の時間が止まったかのような錯覚。
絶叫する小早川教授の動きが、
鈍亀のように遅く見えた。
カチリ。
時計の歯車が動く音だけが、
異様に鮮明に響く。
俺は高まった魔力を手の一点に集中させる。
――辺りに静寂が戻る。
手元には、
見慣れない魔法陣がいくつも重なり、
立体構造を成していた。
《天輪》…魔法陣
「なんだ……その魔法陣は……
そして、その魔力は……!」
男が困惑と恐怖を滲ませた声を上げる。
だが、俺は答えない。
「魔力を渡す。」
天輪に集まった純粋な魔力の奔流を、背後の二人に向けた。
「アリス、エリザ。……あの化け物は、お前たちの敵だ。俺の魔力を受け取れ」
「え……っ!?」
「あ、温かい……。でも、なんて膨大な……!」
集束させた魔力を、
二人のデバイスへと注ぎ込む。
魔法武器は一度デバイス状態へと戻り、
俺の魔力を貪欲に吸収していった。
本来なら、この時期の彼女たちの器では耐えきれないはずの力。
俺は"翠の魔力"で彼女達の肉体を保護し、強引に「次の段階」へと押し上げる。
(思い浮かべるのは原作アニメ三期のアリスとエリザ)
(一時的に、魔法で成長させる必要がある)
アリスに、星々の輝きが宿った。浮かび上がるのは、本来なら数年後の舞台で現れるはずの証。
(――星双のアリス(星環の魔紋)、覚醒……!)
「こ…これが私…星の力…魔力が溢れてくる!」
同時に、エリザの全身を紅色の雷光が包み込む。浮かび上がるのは、王者の証明が戴冠される。
(――雷光王冠……!)
彼女の手にあるデバイス『アストラペ』が、高負荷に耐えるべく瞬時に構造を組み替えた。
「……これは、お母さまのデバイスの本当の形……
第2形態:中距離射撃銃……。これなら、届きますわ!」
「……お父様。いいえ、お母様を傷つけた『怪物』。覚悟してください!」
星銀の光と、紅色の雷。二つの輝きが、絶望に染まった研究所を塗り替えていく。
二人を振り返る。
「これで、あの男に一撃おみまいしてこい」
(原作アニメ二期のラストは、
二人が決める)
(俺の願望だが――
そこは、変えたくない)
(そして、俺は……)
(ジ・アースを止める)
地球の外。
衛星軌道上で高まり続ける魔力反応を、
俺ははっきりと感じ取っていた。
「……運がいいな、小早川教授」
男へ、最後に言葉を投げる。
「魔法少女に倒されるなんて。
感激ものだぞ」
「貴様……何を言っている……!」
俺はもう会話する気もない。
視線を上げる。
遥か頭上――衛星軌道にある《ジ・アース》を睨み据える。
「アリス、エリザ。
ここは頼むぞ」
そのまま、俺は空へと飛んだ。
――衛星軌道上・時空航行戦艦ジ・アース。
展開された幾重もの魔法陣が、
宇宙の理を象徴する巨大な「魔法陣」を形成する。
その圧倒的な質量は、
研究所のみならず、
眠りについた都市一帯を――
物理的に。
そして、概念的に。
「固定化」するに十分な威力だった。
「……次元断絶砲、最終充填完了」
ブリッジに、無機質な報告が響く。
「照準、研究所中心点。
誤差、ゼロ」
艦長は静かに命じる。
「これより、該当地域を次元断絶による隔離を行う
次元断絶砲―発射――」
主砲が発射された――
その瞬間。
艦全体を包む空間が、
“歪んだ”。
「……なっ!?」
観測モニターが、ありえない数値を叩き出す。
「艦長!
艦の外部座標が……固定されています!」
「何ですって!?」
艦長が叫ぶ。
だが、もう遅い。
戦艦ジ・アースの前方――
虚空に、巨大な魔法陣が出現した。
それは、円環。
始まりも終わりもない、閉じた世界。
俺は手に溜めていた《天輪》…魔法陣を解放していた。
『終局だ。
最終解放――
【天輪・円環世界】』
宇宙空間に、俺の姿が浮かぶ。
「……発射を止めさせてもらうぞ」
俺は、円環の中心で手をかざした。
「――ここから先は、
“神殺しの舞台”だ」
作者( ゜Д゜):主人公の必殺技は時間に関係するの技っすね。
オコジョ:詳細を語らない点も伏線か…




