第21話_俺のせい?介入するのをとめられない
「……こちら、時空航行戦艦。
応答しなさい、観察官。状況を報告しなさい!」
艦橋に、艦長の鋭い声が響き渡る。
魔法通信に混じるノイズの向こう側で、ようやく聞き慣れた鳴き声が返ってきた。
『キュ……キュイ(こちら、現場です……)』
「やっと繋がった!
通信妨害でも受けていたの?
地球・研究所周辺の魔力値が、規定の《特観察》レベルを完全に突破しているわ。
これはもう、管理外世界の局地的な異変じゃない。
即・介入レベルの予兆よ」
艦長はモニターに映る、禍々しい数値群を指し示し、オペレーターに命じた。
「本艦は、ただちに《強制介入プロトコル》に移行。
対象惑星への直接干渉準備を開始して」
だが――
通信越しのオコジョの声は、いつになく切迫していた。
『キュ、キュキュイ!(待ってください、艦長!
今、強引に介入するのは危険すぎます!)』
「……なんですって?」
艦長が眉をひそめる。
管理局の常識では、この規模の魔力暴走は即刻封印、
あるいは次元断絶による隔離が定石だった。
『キュイ、キュイッ(現地には、未登録の魔導師だけでなく、
意識不明の要救助者が存在します。
広域封印魔法を撃てば、彼女の精神回路ごと焼き切る危険がある!)』
「……。
でも、このまま静観すれば、あのエネルギーは臨界点を迎えるわ。
そうなれば、その要救助者どころか、周辺一帯が消滅するのよ?」
オコジョは必死だった。
彼の脳裏には、かつて対峙した
“あの男”の圧倒的な圧力が焼き付いている。
――『俺が“合図”するまで動くな』
あの怪物の警告を無視して管理局が動けば、
この戦艦ごと消し飛ばされるのではないか。
そんな、本能的な恐怖が彼を縛っていた。
『キュイ……(提案があります。
本艦は《介入》ではなく、《救助》を最優先すべきです。
まずは現場の精密スキャンと、隠密による状況把握を。
私が合図を出すまで、大規模な魔法行使は控えてください)』
「……観察官が、そこまで言うなんてね」
艦長は不満げに髪をかき上げ、
冷静なオペレーターへと視線を送る。
「どう思う?
彼、何か隠してるように見えるけど」
「艦長。彼の言い分にも一理あります。
それに、今の出力で介入すれば、外交問題で本国が洒落にならないっすよ。
ま、艦長が独身のまま指名手配されるのも、
それはそれで面白いっすけど」
「……あんた、後で覚えてなさいよ」
艦長は深く溜息をつき、
メインモニターを鋭く睨み据えた。
「いいわ。
全艦、次元移動準備。
目標、第97管理外世界・極東地区」
「《隠密潜水モード(サイレント・ダイブ)》を展開。
衛星軌道上から深度100まで降下し、
現場の状況を肉眼で確認するわ」
時空航行戦艦の巨体が、
次元の波間へと、ゆっくり沈み込んでいく。
「観察官……信じてるわよ。
もし、手遅れだと判断したら――
私は、私のやり方で、この星の《掃除》を始める」
通信が切れた。
漆黒の海のような次元の狭間を、
鋼鉄の巨獣は静かに、だが確実に、
戦場へ向かって滑り出していった。
作者( ゜Д゜):ブリッジ!無骨な戦艦も良いであります。
オコジョ:ビシ(敬礼)




