第20話_原作アニメ二期のボスは弱いはず
俺が余裕をもって、高みの見物を決め込んでいられるのには理由がある。
この世界の「原作アニメ二期」におけるラスボス――
エリザの父親は、敵としての格も実力も、本来は大した存在ではない。
所詮は、突然手にした魔法という力に酔いしれ、
制御もできずに暴走しているだけの「勘違い野郎」。
二人のヒロインが力を合わせれば、
苦戦こそすれど、最後には必ず勝利を収める。
そんな「予定調和」のボスだった。
「……それにしても、なんでこう一気に魔獣が湧いたり、
状況が加速してやがるんだ?」
わずかな違和感を覚えながら、
俺は遠隔魔法の投影鏡に映る光景を眺めていた。
戦場を駆ける二人の少女。
「敵が多いですわ!」
移動しながら、次々と魔法生物を屠っていくエリザ。
「バスターシュート!」
立ち止まり、敵集団を一掃するアリス。
「相変わらず、魔法少女ってのは美しいな……」
思わず、そんな感想が漏れる。
過酷な運命に抗う彼女たちの輝きは、
何度見ても、見惚れるほどだった。
物語はいよいよ佳境。
残るのは、魔結晶でその身を強化した
「狂った父親」との最終決戦のみ――
「……ん?」
その瞬間。
心臓を、冷たい指でなぞられたような感覚に襲われた。
そして、俺はある
「重大な事実」に思い至ってしまう。
「……待てよ。
エリザに拾わせた『強化魔結晶』……
俺、何個落としたっけ?」
自問した瞬間、全身から血の気が引いた。
俺が
「物語の帳尻を合わせるため」に
ばら撒いたリソースが――
あの男の器を、
遥かに超えていたとしたら。
――ドォォォォォォォン!!
思考を断ち切るように、
遠方の研究所から、天を衝く禍々しい魔力の奔流が噴き上がった。
大気が震え、
夜空の色すら歪むほどの異常な高エネルギー反応。
「あれは……冗談だろ……!?」
――ヒロイン視点
「……っ!
今の、感じた!? エリザちゃん!」
前を走るアリスが、青ざめた顔で振り返る。
「ええ……。
凄まじい魔力の高まり。
場所は……お父様の研究所ですわ!」
「嫌な予感がする……。
肌がビリビリして、不吉な感じが止まらない」
二人は顔を見合わせ、即座に飛行魔法を展開した。
「お母様も、あそこに……急ぎますのよ!」
「うん、行こう!」
少女たちは一筋の光となり、
戦火の渦巻く研究所へと突き進む。
後に「最悪の夜」と呼ばれる、
長い戦いの始まりだった。
――時空航行戦艦内部
「艦長!
管理外世界・特観察惑星『地球』にて、
想定許容値を突破する膨大な魔力反応を観測!」
ブリッジに、
オペレーターの悲鳴に近い報告が響き渡る。
「艦長、どうします!?
現場に派遣した『観察官』からの
定時連絡も途絶えたままっすよ!」
「ええい、何が起きてるのよ!
魔法通信を最大出力にして、
無理やりあいつを呼び戻しなさい!」
椅子から立ち上がり、
乱暴に指示を飛ばす女性艦長。
だが、オペレータ席から、
冷静すぎる声が飛んだ。
「艦長……
取り乱しても状況は変わらないっすよ。
あと、そういう余裕のなさが、
彼氏ができない原因っすよ」
「彼氏!?
今それ関係ないでしょーが!
全然関係ないでしょ!!」
怒鳴り散らす艦長。
だが、モニターに映し出された破壊的な数値は、
この事態が、
一介の観察官に手に負えるものではないことを、
冷酷に示していた。
オコジョ:…ササッ…サササッ……
作者( ゜Д゜):艦長、オコジョが逃げました。




