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第100話_神剣の騎士

――西部大森林樹海。


急ぎ樹海を抜けた《迅速》カイ。


脳裏に残っているのは、団長の命令。


『――十二守護騎士を集めろ』


その命令を伝えるため。


カイが向かったのは――。


西部、大森林前の陣地。


そこには、時空管理局によって築かれた防衛拠点があった。


しかし。

拠点の中では、すでに混乱が広がっていた。


「上空に見える結界はなんだ――!」


「――どうなってる!?」


「提督は――」


「ヴィンセント提督は、一体どこに――!」


局員たちの悲鳴にも似た声が飛び交う。


まだ、正確な情報が伝わっていないのだろう。


だが――。

カイは知っている。


時空管理局のトップ。

ヴィンセント・クロムウェル提督は――。


――裏切っている。


ここにいる局員や魔導士たちは。


おそらく――。

"提督"に見捨てられたのだ。


カイは近くにいた局員へ声を掛ける。


「通信設備は、使えるか?」


局員が振り返る。


そして――、

カイの姿を見た瞬間――。


「あなたは――《迅速》……」


魔導王国の十二守護騎士は有名だ。


各国の式典。


外交護衛。


国際的な合同作戦。


その姿を目にする機会は多い。


この局員も、

カイのことを知っていたのだろう。


「状況を――

 報告してほしい」


カイは、手短に告げる。


若い局員が慌てて答えた。


「黒い結界の影響か――

 通信設備は全滅です」


「それと……

 トップの提督も見当たりません」


「指示系統が、完全に混乱しています」


必要な情報だけを聞く。


カイは即座に判断した。


「提督はいないものとして判断しろ」


「伝令を直接、走らせるんだ」


「そして――」

カイは、樹海へ視線を向ける。


「樹海から出てくる蟲型魔獣の迎撃準備を」


「はい!」


局員が走り出す。


カイは、提督の裏切りについては伝えなかった。


今、この場で必要なのは真実を語ることではない。


――やるべき行動を示すこと。


それだけだった。


正直。

西部に残された戦力だけでは――。


時間稼ぎしかできないだろう。


だからこそ。

カイは迷った。


十二守護騎士。

《迅速》カイとして――。


ここで指揮を執るべきか。


それとも。

魔導王国の拠点へ直接向かい、伝令を届けるべきか。


その判断を迫られていた。


そして。

来る途中。


一瞬だけ見えてしまった。


あの――。

上空に開いた。


"異界"――。


脳裏に蘇る。

団長の言葉――。


『十二守護騎士を集めろ』


まだ若いカイは――。

その選択に迷っていた。



――――

――


膨大な魔力が集束する。


黄金の魔力。


それは――。

《神剣》アルトリウスの魔力の輝き。


管理者権限型デバイス。

《ディバイン・カリバーン》。


その力が解放される。

挿絵(By みてみん)


神剣から――。

世界へ向けて、命令が実行される。


『――Dimensional rupture.

 Five minutes until Ascalon is unleashed.』


世界が震える。


発動までのタイムリミット。


――五分。


その間にも。

アルトリウスは、押し寄せる蟲型魔獣を次々と斬り伏せていく。


だが。

意識は常に――。


上空の存在へ向けられていた。


――あれは、"ヤバい"。


騎士としての直感が告げている。


あれを放置してはいけない。


――そう感じた。


そんな時だった。


下方から――。

四つの強大な魔力が、一気に上昇してくる。


アルトリウスが視線を向ける。


空中へ浮かび上がってきたのは――。

四人の魔導士。


《魔女》イザベラ。


《魔女》フィオナ。


《烈火》グレン。


そして――。

《魔人》クロムウェル。


クロムウェルが口を開く。


「アルトリウス君」


その視線が、神剣へ向けられる。


「その攻撃は――」


「――見過ごすことは、できないね」


不敵な笑み。


四人の魔導士が、アルトリウスを見据える。


アルトリウスは眉をひそめた。


――新手。


いや――。


分かっていたことだ。


あの時。


自分が――。


見逃した時から。


視線を向ける。


イザベラ。フィオナ。グレン。


そして――。


クロムウェル。


四人。


絶望的な状況だった。


だが――。

敵として前に立つのなら。


――斬らねばならない。


『――Four minutes until final sequence.』


神剣から、無機質な声が告げられる。


――残り四分。


アルトリウスは、静かに神剣を構えた。


「……四人が相手か」

アルトリウスが呟く。


絶望的な戦力差。


普通なら。

そう思うだろう。


だが――。


「関係ない」


一歩。


アルトリウスが踏み込んだ。


――消える。


「な――!?」


最初に反応したのは、グレンだった。


次の瞬間。


アルトリウスの姿が、目の前に現れる。


「グレン!」


イザベラの声。


――遅い。

神剣が振り抜かれた。


「――ッ!」


グレンは咄嗟に両腕を交差させる。


轟ッ!!


凄まじい衝撃。


グレンの身体が吹き飛ぶ。


「ぐおおおおおっ!」


大地へ叩きつけられ。


土煙を巻き上げながら、数十メートルを飛ばされる。


「――団長ぉ!」


イザベラが叫ぶ。


その瞬間。

横から無数の魔力弾が飛来した。


「――《重力弾》」


空間そのものが歪む。


しかし。

アルトリウスは――。


神剣を一閃。


――斬る。


魔力弾が、すべて両断された。


「……!」


イザベラの表情が変わる。


魔法を破壊したのではない。


――魔力そのものの流れを断ち切った。


「厄介ねぇ……」


アルトリウスは神剣を構え直す。


視線の先にいるのは――。


かつての仲間たち。


だからこそ。


あえて言葉にする。


「だが――今は敵だ」


自分自身へ言い聞かせるように。


仲間思いだからこそ。


意識せずにはいられない。


――瞬間。


空気が変わった。


フィオナだった。


周囲から――。


音が消えていく。


世界が変わる。


魔力の流れすら、希薄になる。

挿絵(By みてみん)


『――領域魔法』


『――月夜の沈魂凪

 《ノクターン・カーム》』


「……」


アルトリウスの足が止まる。


フィオナの白銀の魔眼が発動する。


魔力が沈黙する。


術式の構築そのものを阻害する領域。


――魔導士にとっての天敵。


だが――。

アルトリウスは魔法を使えない。


「残念だが、俺には――」


一歩。


「――効かない」


踏み込む。


純粋な魔力。


そして――。


身体能力。


「な……」


フィオナが、僅かに目を見開く。


次の瞬間。

アルトリウスが、一気に間合いへ入った。


「――ッ!」

フィオナが後退する。


その前に――。

巨大な炎が割り込んだ。


「させるかぁぁぁっ!」

全身から炎を噴き上げるグレン。


『――領域魔法』


『――焔帝の骸檻

 《フルバースト・コロシアム》』


「――ッ、グレン」


「――来い」


アルトリウスは正面から迎え撃つ。


炎拳と神剣が激突する。


――轟ッ!!

炎が弾ける。


熱風が樹海を吹き抜ける。


それでも。

アルトリウスは――。


一歩も退かなかった。


「……嘘だろ」

グレンが歯を食いしばる。


「この出力で……」


「止まらないだと……!」


アルトリウスは、静かに神剣を押し返す。


その瞳が鋭くなる。


そして――。

炎拳を弾き飛ばした。


グレンの身体が、再び後方へ飛ぶ。


「ぐっ……!」


その隙を狙うように。

クロムウェルが前へ出た。


「――なるほど」

その口元に笑みが浮かぶ。


「さすがは――」


「王国第一位」


「《神剣》と呼ばれるだけはある」


「……お前も来るか」


「もちろん」


クロムウェルの魔力が膨れ上がる。


――"魔人"。

その圧力に、周囲の空気が震える。


イザベラも。

フィオナも。

再び戦闘態勢へ入る。


――四対一。


アルトリウスは神剣を握り直した。


『――Three minutes until final sequence.』


残り三分。


アルトリウスは一瞬だけ、上空を見る。


黒く歪んだ異界。

そこから響き続ける――。


『o■■uo■■uo■a■a■i■■a■a■』


意味を持たない声。


直感が告げる。

――あれを放置してはいけない。


ならば。

「あと、三分で終わらせる」


神剣が、黄金の魔力を纏う。


クロムウェルが笑った。

「――できるかな」


膨れ上がった魔力によって。


樹海が震える。


大地が軋む。


王国十二守護騎士、――第一位。


《神剣》アルトリウス。


そして――。

《強欲の夜帳(ハプギーア・ナハト)》。


四人の魔導士たちによる――。


決死の戦いは、続く。


作者( ゜Д゜):活動報告に新しく『小説PV動画』動画付けました。

オコジョ:AIアニメーション作成してたんか!

作者( ゜Д゜):最近の趣味ですので!

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